齊藤工 児童養護施設を映画に 劇場では“手紙”を配布「できることが必ずある」
■配信やDVD化は行わず“劇場”だからの価値を
――近年、劇場公開後は配信が行われたり、DVDになったりしますが、映画『大きな家』は、映画館のみでの公開です。映画館だからこそできることはどんなことですか? 齊藤さん:テレビがこれほど浸透する前の時代は、もっと細かく各地域に映画館というものがあって、そこが地域のハブのようなかたちで、ただ映画を見るだけじゃなくて、大いなる情報だったり共有する娯楽として意味を持っていたと思うんですね。 それからテレビが各家庭に入っていって、またそのエンタメの意味合いが変わっていって、さらに今SNSだったり配信も含めてさらに広がっている中、“その場所でしか味わえないものの価値”っていうものが、映画産業にとってはとても重要なんじゃないかな。例えば4D上映とかサラウンドとかIMAXとか、自宅で味わえるものと劇場でしか味わえないもののすみわけっていうものを、よりしていくというのも、一つ映画の未来なのかなと思います。 同時に、この作品はやはり出演者ファーストということは、何より優先するということは未来永ごう変わらないので、劇場で出会ってくれた方たちと一緒に(出演者を)守っていくっていう形をとっていく。もしかしたらほかのこれから生まれる作品だったりというものの、何か一つの選択肢になっていったらいいんじゃないかなと。それは劇場さんに対しても一つ大きな訴えになると思っています。
■映画を通して伝えたいメッセージ「当たり前の言葉っていうものに耳を傾ける」
――SNSでは、いい意味でも悪い意味でも個人の主張が強く反映される時代です。その中でこの作品を世に出すというのはどんな思いがありますか? 齊藤さん:この時代、公の人間のメリット・デメリットっていうもののデメリットっていう部分が、ある意味SNSを通じて、非常にデメリットの方が大きくなっていってしまっているっていう体感は、20年以上多分この世界に僕いるんですけど、あの頃とはもう全く違う現状があるなと。この映画に登場してくれた人、映像にまつわる職業の人たちをどう守っていくか、どの職業も“見直しの時代”にあると思いますので、そういう意味ではこの作品の行く末というのは、本当に是非が問われるんじゃないかなと思いますし、僕は守る側の人間なので、そこは何に変えても守っていこうと思っています。 ――映画を通して伝えたいメッセージはなんですか? 齊藤さん:この映画に出会っていただきたい一番は、自身の日常の世界線に彼らの日常がある。そしてその施設という場所に対してできることが必ずあるということで、そのきっかけみたいなものをこの作品が手渡しでお渡しできていけたらいいなと。 声なき声だと、彼ら自身、 彼女ら自身がどこか思っている節を感じました。大々的なメッセージじゃなくてもいいんですよ、普通の言葉。彼らの当たり前の言葉っていうものに耳を傾けるっていうことが何より大事だなと思いました。そういうきっかけが、きっかけを生むっていうことは、もしかしたら映画っていうものの責務なのかもしれないなと思いました。