『監督が怒ってはいけない大会』に密着!主宰のバレーボール元日本代表・益子直美さんが「スポーツの指導に“怒り”はいらない!」と主張する理由は?
とにかく子どもたちに楽しんでもらいたい!だから“怒る”は必要ない
スポーツをやる以上、「勝たなければならない」「強くならなくてはいけない」だから、子ども相手でも多少の厳しい指導は仕方がない。そう考える方もいると思いますが、果たしてそうでしょうか。そもそも厳しい指導は効果的なのでしょうか。 かつての自身の経験から、「とにかくバレーボールを楽しんでもらいたい」と考えたバレーボール元日本代表益子直美さんは、ジュニアチームを指導する北川夫妻とともに「監督が怒ってはいけない大会」をスタート。今回は大会や益子さんの想いについてじっくり伺いました。 【画像7枚】『監督が怒ってはいけない大会』の様子を写真でチェック ――「監督が怒ってはいけない大会」はどんな大会ですか? 益子さん 私の名前を冠して小学生のバレーボールの大会をやることになったとき、とにかくこの大会は子どもたちに楽しんでもらいたい、バレーボールは楽しいと思ってほしくて。私自身の学生時代は(バレーボール部の)監督に怒られてばかりで、ときにはぶたれることもあって、バレーボールがあっという間に嫌いになったんですね。 だから、まずは“監督が怒ってはいけない”っていうルールをつければ、子どもたちが楽しめるかなと。大会を始めて今年で10年目。当時は安易につけた大会名でしたが、続けるうちに価値観がどんどん変わって、アップデートして、成長を続けています」 【『監督が怒ってはいけない大会』理念】 ・参加する子どもたちが最大限に楽しむこと ・監督(監督・コーチ・保護者)が怒らないこと ・子どもたちも監督もチャレンジすること 怒ることすべてを禁止しているのではなく、ルールやマナーを守れない、取り組む態度、姿勢が悪い、いじめや悪口、危ないことをしたときはきっちり怒ります。しかし、プレー中のミスに対する感情的な叱責は禁止。子どもが混乱しないよう、怒ることと怒らないことの線引きをしっかりしているのが特徴です。 小学生のバレーボール大会から始まったこの大会も、現在はバスケット、空手、ハンドボール、サッカー大会と、その輪が広がり、全国各地で大会が開かれています。 ■大会のスタート当初はネガティブな意見も ――大会の運営は順調でしたか? 益子さん 実は大会を始めてから2年間は、「バレーで怒っちゃダメなんて益子はなんておかしなことをやっているんだ!」と、バレー界の人に絶対に怒られると思って誰にも言えませんでした。 3年目に初めてSNSで発信し、取材を受けると大きな反響が。賛同してくださる人がいる一方で、予想通り「お前も怒られて育ってきたんだろう。お世話になった監督を否定するのか」など、ネガティブなメッセージも多数届くようになりました。 ――どんなお気持ちでしたか? 益子さん そのときは、私自身もまだ考えがブレブレの時期だったんですね。やっぱり怒りは必要なのかなぁ…とか。自分もそうやって育ってきて、成功体験がそれしかなかったから。 当時、大学の監督もしていたのですが、そこで“怒り”を使ってしまったんです。怒っちゃダメと言いながら、自分では使ってしまい自己嫌悪。落ち込んでいた矢先、大きな発作が起きたと思ったら心臓に病が見つかりました。 そこからですね、こんな自分から卒業したいと思って『スポーツメンタルコーチング』の学校へ通い、あとは『アンガーマネジメント』や『ペップトーク』などを学び、ようやく怒っちゃダメだっていう軸が固まったんです。 怒らなくても、勝利と育成、両方が手に入るやり方は絶対にあるはず。それを見つけていきましょうという想いでここまで続けてきました。