『監督が怒ってはいけない大会』に密着!主宰のバレーボール元日本代表・益子直美さんが「スポーツの指導に“怒り”はいらない!」と主張する理由は?
監督コーチは怒るのではなく“命をかけて言葉を磨かなければならない”
――怒らなくても勝てる!が実証されたわけですが大会での指導のコツはありますか? 益子さん 大会では午前中、ほとんどボールを使いません。そのプログラムも1つ1つ考えながら作っていて、それぞれにやる理由があります。 まずは『〇×クイズ』。「私は昨日の夜もつ鍋を食べた。〇か×か」のような誰も答えを知らない質問をすることがポイントです。子どもたちは自分で〇か×かを選択をする、決断することを遊びながら学びます。アスリートには運も大事ですしね。何問正解したかは申告制。ここでスポーツマンシップも学べます。 また、監督自身が舞台に1人で立つことがどれだけ緊張するのかを体験するプログラムもあります。ある監督は「ものすごく緊張した。もうサーブミスするな!なんて言えなくなった」とお話されていました。 こうして、真剣勝負の前にレクリエーションをすることで、子どもたちの心をほぐして笑顔を引き出します。昼休みには私から監督、コーチ、保護者の方に『アンガーマネジメント』のセミナーも行い、「怒りは6秒我慢しましょう」などの手法を伝えています。 ■「してほしくない」ことでなく「してほしい」ことを伝えます 益子さん 言葉も大切です。例えば「サーブミスするなよ」はしてほしくないことを言っていますよね。そうではなくて、“やってほしい変換”をします。クロスに思いっきり打ってほしいと思ったら、そのまま「クロスに思いっきり!」と伝えましょう。「ミス」「負ける」などネガティブな言葉も脳が緊張してしまうのでダメですね。 ミスしたことでなく、チャレンジしたことをほめてあげる。そして、またチャレンジしたくなるように「よくチャレンジしたね!」と。この言葉はネガティブでないか、適切かどうか考えてから言葉を発すること、これだけでも声掛けが変わります。 選手たちは心技体を必死に鍛えていますよね。背中の一押しをするために監督コーチは、“命をかけて言葉を磨かなければならない”と思い、それも伝えています。 ■親は「あれやっちゃだめ!これはダメ」と言わず、結果を求めすぎないで 益子さん これは夫ともよく話すのですが、夫は学生時代から自転車競技をやっていましたが、夫の親は口を出さずに応援してくれて、試合会場に連れて行ってくれて、負けても怒ることはなかったそうです。「あれやっちゃだめ!これはダメ」などと言わずにやりたいようにやらせてくれたから、自分で考えて行動できるようになったって。 強くなるためにはどうすればいいかを切り開いていく力は、怒られていては絶対に養えないものなので、そこを育むようなサポートをしてもらえたらいいかなって思いますね。 多くの親御さんは結果を求めがちですが、小学生のうちは結果が出てもあまり役に立つことはなく、むしろ燃え尽き症候群になってしまうことが多いんです。 だから、今結果が出ていないお子さんがいても、「うちの家系は遅咲きだから」「大器晩成型だから、もうちょっと頑張って続ければレギュラーになれるよ!これからだよ」と伝えて、優しくサポートしてあげてほしいなと思います。 ――今、お子さんが怒る指導で苦しんでいる場合はどうしたら良いでしょうか 益子さん 親御さんが勇気を持ち、子どもを守ってあげて欲しいですね。そして、その場所以外に子どもが楽しめる環境を探すほうがいいと思います。バレーボールでは、そういった境遇の親御さんが自分たちでバレーボールチームを作った例もありますよ!