いとしいしぐさ、笑い声…会えなくても忘れない、2人の孫に届ける心の歌 夫と長女も津波の犠牲に。コンサートを開く女性の願いと、これまでの13年
岩手県大槌町の自宅に家族7人で穏やかに暮らしていた佐々木俊子(ささき・としこ)さん(70)=盛岡市=は13年余り前、東日本大震災の津波に孫の祝田悠弥(いわいた・ゆうや)ちゃん=当時(6)=と、はるひちゃん=当時(4)=を奪われた。まぶたに浮かぶいとおしいしぐさ、いつまでも耳に残る笑い声。大切だった2人に、もう二度と会うことはできないが、決して忘れることはない。そんな思いを込めた歌が新たに生まれた。「癒えることのない悲しみを抱えた人たちの心に寄り添い、歌い継いでほしい」。来年3月にコンサートを開催し、1人でも多くの人に届くことを願っている。(共同通信=日向一宇) 【写真】背中に強い衝撃を感じ、記憶が… 気が付くと体は泥に埋まっていた 東日本大震災、児童74人犠牲の小学校で生還 「奇跡の少年」呼ばれるのが嫌だった、重圧と葛藤の12年
▽孫への思いがあふれる4分半の歌 佐々木さんは昨年11月、広島を拠点に活動するシンガー・ソングライター、にかもとりかさんが盛岡市で行った「ピアノ弾き語りプチライブ」を鑑賞した。優しい歌声と旋律に心を打たれ、公演後に「孫のために歌を作ってほしい」とお願いをすると、快く引き受けてくれた。自身の境遇に加えて、イメージ作りに役立ててもらえればと、かつての大槌町の海や山、街並みなど思い入れのあった風景のほか、祭りでねじり鉢巻きをして太鼓をたたく悠弥ちゃんや、保育園の運動会に参加するはるひちゃんの写真も見てもらった。 そして、誕生したのが「クレヨン」というタイトルの歌。佐々木さんのもとへ音源が届いたのが、3月のはるひちゃんの誕生日だったことに不思議な縁を感じた。穏やかで、ゆったりとしたピアノの伴奏が響く4分半ほどの歌の歌詞には、孫たちへ伝えたい思いがあふれていた。 わたしのクレヨンには 欠けた色があって
その色は心の中で塗っています 他の何色にも変えられないその色は とても大切で何より愛しくて 初めて聞いた声も ちゃんと思い出せるよ 好きだった歌 聞こえるようで 忘れていないよ いまも心に 飛行機雲はきっと あなたからのメッセージ 届いているよ 伝わりますか? あの街も海も空も全てが宝物 伝えたいこと 会いたい思いが募って 言葉にできない これからだって 大好きなまま 誰も代われない場所 あなたがそこにいる ▽題名に込めた「いつまでも色あせない思い出」 にかもとさんは「佐々木さんが悠弥ちゃんと、はるひちゃんについて話してくれた際の『忘れないよ』という言葉に動かされて歌が生まれた。人は誰も誰かの代わりにはなれない、思い出は誰にも消すことができない宝物。それを2人がたくさん絵を描いたであろうクレヨン、時間がたっても色があせないクレヨンで塗って、いつまでも残したいという思いを表現したかった」と語る。