自動変速はサーキットでも楽しい!ヤマハの看板車種「MT-09」の3モデルを比較試乗
■スポーツライディングが楽しめる自動変速
多くの人が気になるのは、新たに自動変速機構を搭載した「MT-09 Y-AMT」でしょう。スポーツライディングを楽しむための変速機構だという触れ込みですが、実際に乗ってみると確かにその通りだと思える完成度です。 「Y-AMT」と呼ばれるこのシステムは、クラッチレバーや足元のシフトレバーがなく、AT限定の二輪免許でもライディングできます。自動で変速してくれるモードのほか、左の手元に設けられたレバーで、任意のタイミングで変速できるモードも搭載されています。 試乗はサーキットで行いましたが、クラッチ操作がなく、アクセルとブレーキや車体をバンクさせる操作に集中できるのは新鮮。自動変速といっても、スクーターのようなCVTとは違い、明確なシフトチェンジの感覚を伴って加速していくフィーリングは明らかにスポーツバイクのそれです。シフトのタイミングもスポーティで、特に「D+」と呼ばれるモードでは、かなり高回転まで引っ張ってくれるので、サーキットでも不満を感じることはありません。 AT免許で乗れるというと「それは楽しいのか?」と疑問を抱く人もいることでしょうが、エンジンの美味しいところをしっかり使ってくれるシフトプログラムのおかげで、サーキット走行を満喫できました。クラッチやシフトの操作から解放されたことで、サスペンションの動きや荷重移動に集中できる感覚は、ほかのマシンでは味わえないもの。無意識で行っていたつもりの変速操作に、意外と脳のリソースを使っていたことが感じられたのも貴重な体験でした。タイムは測っていませんが、意外と自動変速モードで走っているときが一番速かったのでは? と思えるほどです。 サーキットの後、パイロンで仕切られた低速のスラロームコースも走ってみましたが、こちらでは「Y-AMT」の効果をより体感することができました。Uターンや低速のスラロームでは、途中でエンストするのが一番怖いので、半クラッチ操作に気を使いますが、「Y-AMT」ではその気遣いが皆無で済みます。グリップを探りつつ車体を寝かしたり、ハンドルをより深く切れさせることに集中できるので、不安なくスラローム走行を楽しめました。 今回は体験していませんが、信号待ちからの発進や、渋滞の中ではそのメリットがより感じられるはずで、長距離ツーリングや峠に行くまでの移動セクションが長い場合には、その恩恵をより感じられることでしょう。