非情采配で執念ドローの“風間グランパス”はどう進化しているのか
ちょっとした異変だった。右太ももの裏を痛め、サンフレッチェ広島との前節を欠場した司令塔ガブリエル・シャビエル(25)が、名古屋グランパスの最初の交代選手として投入される。ベンチへ下がるように命じられたのは昨シーズンのJ1得点王、エースストライカーのジョー(32)だった。 敵地Shonan BMWスタジアム平塚で湘南ベルマーレと対峙した、4日の明治安田生命J1リーグ第10節。グランパスの風間八宏監督(57)は1点を追う後半11分に、出場したリーグ戦で32試合続けて先発フル出場していたジョーに、ためらうことなく見切りをつけた。 「少し疲れていたのかはわからないが、今日のジョーは流れのなかに入って来られなかった。ボールの受け方だけでなく、ミスを連続するところもいつものジョーではなかった。そういう意味でシャビエルを入れて、リズムを作りたいと考えていた」 試合後の公式会見。ジョーを交代させた意図を問われた風間監督は、淡々とした口調でこう答えている。果たして、シャビエルを中心としたパス回しを介してグランパスの攻撃は活性化され、後半20分には同点に追いつく。大胆かつ非情に映った采配を、指揮官は当然とばかりに振り返った。 「選手たちはよければそのままプレーするし、よくなければ途中で変わる、ということ」 クラブ史上で初めてJ2降格を喫した、グランパスの再建を風間監督が託されたのが2017シーズン。最終節まで強いられた昨シーズンのJ1残留争いの渦中でもぶれなかった、究極の攻撃的なスタイルを妥協することなく追求していく挑戦は、就任3年目となる今シーズンも継続されている。 2012シーズン途中から4年半率いた、川崎フロンターレでも標榜した「ボールを止める、蹴る、人が動く」を絶え間なく繰り返すことで試合を圧倒的に支配し、エンターテインメント性に富んだサッカーを魅せる。加えて今シーズンは、敵陣でボールを奪い返す守備が威力を発揮している。