非情采配で執念ドローの“風間グランパス”はどう進化しているのか
サガン鳥栖から加入した吉田豊(29)も、左サイドバックに定着している。この日の先発メンバーのうち昨シーズンの開幕戦で先発したのはDF宮原和也(23)、MF長谷川アーリアジャスール(30)、和泉の3人だけで他はすべて入れ替わっている。 弱点を補うために、積極的かつ的確な補強に動いてきたフロントの後押しも今シーズンの好調ぶりに反映されている。しかし、成長を期して加入してきた新戦力がスムーズに順応できたのも、チームの土台部分に「ボールを止める、蹴る、人が動く」の風間イズムが十分に浸透していたからに他ならない。 「言われてみれば当然のことですけど、最初はなかなか難しい部分があった。それでも、それ(風間イズム)を理解してピッチで実践できているときは、相手がどこでも関係なく自分たちがやりたいことが表現できていて、いい結果にもつながっていたと思う」 和泉が言及したのは、破竹の7連勝をマークした昨年8月以降に見せた、無双と言ってもいい強さを指しているのだろう。ただ、7連勝中で完封は一度だけで、残る6試合で8失点を献上している。連勝中に12ゴールを量産し、元ブラジル代表の実力を証明したジョーの存在も見逃せない。 今シーズンのジョーはチーム最多の4ゴールをあげているものの、第2節以降は5試合続けて不発に終わり、ベルマーレ戦でも精彩を欠いた。エースの決定力だけに頼ることなく、それでいてソリッドな守備をも身にまといつつある今シーズンは、昨シーズンとは次元がはるかに異なる目標を、つまり優勝争いを設定することができるのではないだろうか。 「後半を見れば、自分たちで立て直せる力が確実についてきたのは間違いない。ただ、悪いときでも自分たちのアベレージをどこへもっていくのか、ということを選手たちは理解しなければいけない。それができればもっと波のない試合ができるし、波のないシーズンをすごせる。そうした部分には、これからも取り組んでいきたい」 好不調の波が激しかった昨シーズンからの修正点をあげながら、今後を見すえた風間監督はJ1通算102勝。歴代で8位につけているものの、10傑のなかではただ一人、国内三大タイトルをひとつも手にしていない。フロンターレ時代から数多くの選手を成長させてきた名将が、いつしかつけられた「無冠の」という枕詞を返上できるかどうか。令和元年のJ1戦線に、新たな楽しみが加わろうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)