非情采配で執念ドローの“風間グランパス”はどう進化しているのか
風間監督が就任する以前のグランパスを知っている選手は、いま現在ではわずか4人しかいない。そのなかでベルマーレ戦に出場した唯一の選手、左サイドハーフの和泉竜司(25)は「守備の部分は明らかに変わった」と、チームの進化に対して手応えを深めている。 「基本的には自分たちがボールを保持する、というサッカーを目指していますけど、当然ながら守備の時間もある。そこで引いて守るのではなく、敵陣で奪ってチャンスにつなげる場面が増えている。昨シーズンもやろうとしていたことを、今シーズンはさらに上手く表現できていると思う」 戦力面で言えばボランチの補強が大きい。セリエAのアタランタBCから加入した、U-20ブラジル代表歴をもつ左利きのジョアン・シミッチ(25)がボールポゼッション率のアップに、FC東京から加入した元日本代表の米本拓司(28)が敵陣でのボール奪取や回収に、それぞれ大きく寄与している。 高い位置でボールを奪い返せば、その分だけ相手ゴール近くで2次攻撃を仕掛けられる。4バックを基本とする最終ラインの位置取りも高くなり、スムーズにパスを回せる状況をも作り出せる。結果として相手のハーフコートに押し込めた状態で、試合を進めていくことができる。 第10節終了時の成績を比べれば、昨シーズンは7連敗の真っ只中で最下位にあえいでいた。9得点はリーグワースト2位タイ、20失点は同ワーストにランクされていた数字は、攻守のバランスを著しく欠き、ボールを失った直後に脆弱さをのぞかせていたことを物語っている。 一転して今シーズンは6勝2分け2敗。シャビエルからシミッチへのホットラインを開通させ、ドローにもちこんだベルマーレ戦で2位の座と、首位のFC東京との勝ち点差4ポイントをキープした。18得点はリーグトップ、7失点は最少のFC東京の5失点に僅差の4位タイと大きく改善されている。 もちろんシミッチと米本だけでなく、ワールドカップ・ロシア大会の開催に伴って中断された昨夏に加入した元日本代表の丸山祐市(29)、リオデジャネイロ五輪代表候補の中谷進之介(23)の両センターバック、左利きの攻撃的MF前田直輝(24)らがフィットしたことも見逃せない。