「日本は開発競争にくらいつくしかない」『イプシロンS』燃焼試験でまた爆発
日本が開発を進める小型ロケット『イプシロンS』。鹿児島県の種子島宇宙センターで行われた2段目モーターの燃焼試験中に爆発が起きました。 【画像】「日本は開発競争にくらいつくしかない」『イプシロンS』燃焼試験でまた爆発 26日午前8時半に始まったロケットモーターの燃焼試験。異変が起きたのは、2分間の試験が中盤に差し掛かったころでした。何かが吹き飛んでいるのが見えます。 去年、秋田で行われた同じ2段目モーターの燃焼試験でも爆発が起き、実験場は使用不能となりました。 今回、種子島に場所を移し、点火装置を断熱材で覆うといった対策を施したうえで臨んだ試験でした。詳しい原因はまだわかっていませんが、燃焼圧力が予測よりも高くなったそうです。 JAXAイプシロンロケット・井元隆行プロジェクトマネージャ 「燃焼開始から約20秒から(燃焼圧力が)徐々に予測とずれている。予測よりも高くなっていって、49秒時点で爆発した」
JAXA曰く「これまで特別だった宇宙の敷居を下げる」ロケット。それが、イプシロンです。 去年、1号機の打ち上げに失敗したものの、その後、3機連続で成功しているH3ロケットとは、大きな違いがあります。 一つは大きさ。全長60メートルを超えるH3ロケットに対し、イプシロンSは、その半分以下です。燃料も違い、固体燃料を使うイプシロンは、より安く打ち上げができます。管制室をのぞいてみても、H3は多くの人が見守っている一方、イプシロンは少人数です。 通信や気象観測など、需要の高まる人工衛星ビジネス。ローコストのロケットで、市場拡大を図るのが狙いです。 JAXA宇宙輸送技術部門・布野泰広理事(当時) 「イプシロンSロケットが官需のみならず、小型衛星、超小型衛星、キューブサットといった国内外の多様な商業衛星の打ち上げ需要を満たし、衛星打ち上げ市場で、国際競争力を発揮する世界の実現を期待」
イプシロンSには、ベトナムの地球観測衛星が搭載されることになっています。打ち上げは今年度中の予定ですが、実験場にも被害が出ているため、計画の見直しは必至です。 JAXAイプシロンロケット・井元隆行プロジェクトマネージャ 「(Q.復旧にはどれくらいかかるか)最低限、数カ月かかる可能性が高い」 2040年までの20年で、3倍の150兆円規模に膨らむと予測されている世界の宇宙産業。 イーロン・マスク氏率いるスペースXは、今年、すでに100回以上、打ち上げを成功させ、今月だけでも13回に上っています。しかも、1段ブースターの回収・再利用が可能という代物です。中国も、ロケット『長征』を、去年から今年にかけ、60回ほど打ち上げるなど、宇宙開発は2強の時代となっています。 宇宙工学に詳しい専門家は、失敗を許容する文化が必要だといいます。 東京理科大学・米本浩一元教授 「イーロン・マスクもファルコン9を3回失敗して、4回目に打ち上げることができた。それも勉強のうちだといって、ずっとやり続ける。うまくいかない、失敗する場面が出てくると思うが、それは高いレベルにいくためのステップだと、理解するような見方をしてもらうようお願いしたい」
◆開発競争でリードされるなか、日本に活路はあるのでしょうか。
航空宇宙工学が専門で、東京理科大で教授を務めていた米本浩一さんは「世界と対等に宇宙ビジネスをするには、宇宙開発の自立性を確保することが重要な要素。アメリカや中国のロケット技術は、はるか先に行っているが、日本は低コストで宇宙へ物資を届けるロケットとして、“物流ビジネス”を確立し、開発競争にくらいつくしかない」といいます。
テレビ朝日