「認知症予防」「フレイル予防」実証事業を目的とした協定を締結 山梨県と東京大学高齢社会総合研究機構
2030年には、3人に1人が高齢者になると予測されている日本。中でも地方都市では、人口減少と高齢化が深刻な課題とされ、介護人材の東京圏への流出や、生活・行政サービスや社会インフラの維持が困難になる事態も懸念されている。 【画像】山梨県は東京大学高齢社会総合研究機構と認知症予防の実証事業を行う連携協定を締結した
そのような中、山梨県は新たな取り組みとして、「悲観的に捉えられがちな高齢化を希望の持てる姿に変えるためには、社会システムの変革・創造が必要」という考えを元に、高齢化の課題解決に取り組んでいる東京大学高齢社会総合研究機構と、認知症予防の実証事業を行う連携協定を締結した。
研究機関のノウハウをフィールド実証へ活かす
連携協定の項目は、下記の3点だ。 【1】認知症予防及びフレイル予防の学術研究に関すること 【2】地域社会の発展に寄与すること 【3】その他、本協定の目的を達成するために必要なこと 「『認知症予防の学術研究』については、上野原市をフィールドとした認知症予防の実証実験などに連携して取り組んでいく予定で、2025年1月から事業をはじめる計画です。『フレイル予防の学術研究』や『地域社会の発展』については、今後、東京大学高齢社会総合研究機構と本県のお互いの強みを生かして連携していけるよう、検討していきます」(山梨県福祉保健部長寿推進課) 東京大学高齢社会総合研究機構は、認知症の発症と生活習慣病や全身性代謝障害の関係など、新たなアプローチによる最新研究を行っており、健診データをAIで解析し認知症発症リスクを評価するシステムや、ストレス管理の手法など、認知症予防に活用できる研究成果が蓄積されている強みがある。 山梨県ではその強みを活用した住民の認知症予防に実際に用いる事業の企画・運営部分を担い、上野原市を実証フィールドとして実施する予定だ。
広報番組がきっかけとなり連携内容を検討
連携協定が締結された背景には、山梨県が持つ特徴的な環境も関係している。 「県の広報番組で知事と東京大学高齢社会総合研究機構の酒谷薫先生が対談した際に、認知症と生活習慣病とストレスの関係が話題に挙がり、酒谷先生から森林に囲まれ、農作業が盛んで、温泉資源も豊富である山梨県は、ストレスを軽減するのに適したエリアであるとお話しがありました。それをきっかけに、エリアの特徴を活かした実証事業が考えられないかと両者で検討しはじめました」(同前) 具体的には、実証地の上野原市で住民向けセミナーの開催、住民の健診データをAIで分析、認知症リスクを評価し、オーダーメイドの改善策を提案するなどの事業を展開するという。 今後、高齢化が進む地方の光となる取り組みとして、山梨県が目指す『やまなしモデル』(県民の認知症予防を推進し、健康寿命を延伸する新しい標準モデル)に注目していきたい。 構成・文/介護ポストセブン編集部