39mの超巨大望遠鏡をデジタルツインで完全管理 ~世界最大天文台が目指す未来~
AIとデジタルツインの融合――その期待と懸念
――最後に、将来における生成AI(人工知能)などの新技術の活用について、展望を聞かせてください。 ライディングス氏 デジタルツインとAIの組み合わせには大きな可能性を感じています。望遠鏡のシステムは非常に複雑で、従来の手動での監視は現実的ではありません。そのため、バックグラウンドで動作するAIによる自動データ分析が不可欠となります。 具体的には、センサーデータのリアルタイム分析による異常検知を実現し、パターン認識技術を活用して故障の予兆を検知することを計画しています。また、複数のセンサーから得られるデータの相関を分析することで、問題の根本原因をより正確に特定することが可能になります。さらに、AIを活用して部品の寿命を予測し、最適なメンテナンスのタイミングを提案する予測保守システムの構築も目指しています。これらの技術を統合することで、望遠鏡全体の運用パラメータを自動的に最適化し、より効率的な運用を実現したいと考えています。 ヤーコブ氏 設計/製造工程においても、AI活用の可能性を積極的に検討しています。特に設計段階では、材料選択の最適化や部品選択の効率化、そして設計規格の自動確認などにAIを活用することで、設計プロセスの大幅な効率化が期待できます。また、製造プロセスにおいても、品質管理の自動化や製造パラメータの最適化、不良予測と防止などへの応用を検討しています。 ただし、メカニカルエンジニア統括の立場としては、慎重なアプローチをとる必要があると考えています。現在、私たちは「Fusion Manage」などの基盤システムの導入を進めており、チーム全体で協調的な作業方法を確立する段階にあります。そのため、新技術の導入によってチームに過度な負担をかけることは避けたいと考えています。 当面は、材料データのプロパティ入力の自動化など、明確なメリットが見込める限定的な領域から段階的に導入を進めていく方針です。 (取材協力:オートデスク)
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