39mの超巨大望遠鏡をデジタルツインで完全管理 ~世界最大天文台が目指す未来~
大規模デジタルツインの実装計画とは
――ELTプロジェクトではデジタルツインを構築しているのですか。それはどのような規模で実装しているのでしょうか。 ライディングス氏 2024年4月に取り組みを開始した段階ですが、建物全体とその背後にある全ての機械系統をカバーする大規模なシステムを計画しています。規模感を具体的に説明すると、現在取り扱っているドームと主構造の調整モデルだけでも、約150のIFCファイルとRevitファイルがあり、これらは防火システム、構造システム、冷却システムなど、さまざまな分野をカバーしています。 さらに、主鏡798枚のセグメントのうち、1つのセグメントには約1000の個別のコンポーネントが含まれており、これを全セグメントに展開していく予定です。 実装の中心となるのが振動検知システムです。望遠鏡のミラーは振動に非常に敏感なため、望遠鏡全体に何百万という高精度センサーをグリッド状に配置する計画です。とりわけ主鏡周辺部には特に高密度にセンサーを設置し、さらに免震装置の各ポイントにも状態監視センサーを配備します。 これらのセンサーから得られるデータは、光学像で見られる問題とその原因の関連付けに重要な役割を果たします。例えば、電子キャビネットのベアリングやファンの異常といった小さな問題でも、観測データに影響を与える可能性があります。このデータがなければ、画像に問題が見られても、その原因を特定することが困難です。 ――どのようなアプローチで建物全体とその背後にある全ての機械系統をデジタルツインにしているのでしょうか。 ヤーコブ氏 まず小さなモデルから始めて、それらの管理方法を理解し、その後拡張していくという段階的なアプローチをとっています。例えば、チリの開発チームは主鏡の1セグメントのモデルを使って、デジタルツイン内での機能検証を行っています。これを798枚全てのセグメントに拡張する前に、システムの動作を十分に検証する必要があります。 デジタルツイン構築の最終的な目標は、予測保守機能を含む望遠鏡全体の制御です。システムは変化を検出し、問題が発生する前にベアリングの交換などの保守作業を推奨できるようになる予定です。