新首相・石破茂が考える<政治とカネ問題>。「政治家はどんなカネをどう使うべきか、不断の見直しが必要。10年前の常識も現代では非常識に」
2024年10月27日、第50回衆議院議員総選挙の投開票が行われました。今後の政治情勢に注目が集まるなか、10月1日に第102代内閣総理大臣に指名された石破茂首相は、現在の世論について「政治改革に寄せる社会の期待感は、明らかに落ちている印象」と語っていて――。そこで今回は、石破首相が自民党総裁選に先駆けて綴った著書『保守政治家 わが政策、わが天命』より一部引用、再編集してお届けします。 【写真】「私は一貫して、国民が納得できるようなことを前倒しでやるべきだと申し上げてきた」と語る石破首相 * * * * * * * ◆収支を明確にできないカネの存在 政治活動を行うための必要経費については、すべて政治資金収支報告書に記載すればいいと思われるかもしれませんが、政治活動についてはもう一つ、公職選挙法と言うルールがあります。 このどちらも満たした活動でなければ合法な政治活動と認められないのですが、時としては一般常識を逸脱することもあり、それが「政治とカネ」の問題がなくならない理由の一つになっています。 例えば、地元で自民党の会合を開こうとしたところ、会場の都合で昼食の時間に重なってしまった。せっかく忙しいところ来てもらうので、簡単なお弁当でもご用意したい。というのが一般常識の範囲ではないでしょうか。 ところが、公職選挙法では、選挙区では基本的に何をもらっても、何をあげてもダメ。何をおごられても、何をおごってもダメ。ですからちゃんとしようと思えば、お弁当を出して会費を取るか、何も出さないか、どちらかなのです。 どうですか? そんな会合のお誘いが来たら、あなたは「なんて非常識なんだろう」と思いませんか? これは一例にすぎませんが、こういった「ズレ」が積み重なって、報告できない使途、収支を明確にできないカネの存在を許していくのだと私は思います。
◆政策活動費とは 派閥からの金を「政策活動費」だと思っていたので、報告書に記載しなかった、という話もありました。 「政策活動費」とは、政党から政治家個人に支出される政治資金の費目の一つで、政治資金規正法は政治家個人への寄付を原則禁止していますが、「政党がする寄付」については、例外的に許容されています。 政治家個人への寄付というのがポイントで、政治家の資金管理団体には政治資金収支報告書の提出義務がありますが、政治家個人は資産公開と通常の確定申告のみのため、使途を報告する必要がないお金となっています。 総務省が23年11月に公表した22年の各政党の報告書によると、党から所属国会議員に渡された「政策活動費」の額は、自民党14億1630万円▽立憲民主党1億円▽国民民主党6800万円▽社民党700万円。日本維新の会は政党支部から5057万円を支出していた、となっています。 例えば議員間での会合費に使ったとして、その相手や金額まで分かるように報告してしまったら、どうでしょう? それを見てそれぞれの議員が、「自分の時は1万円のお店だったのに、**先生の時は3万円の店だったのか」とわかってしまうのは、具合が悪いと思いませんか? 議員間でパーティ券を購入することもあります。これも同じ問題が起きます。透明にしてしまったら、「自分の時は2枚しか買ってくれなかったのに、**先生のパーティでは5枚も買っているのか」と思われてしまいます。とてもやりにくいことになります。 ですから、使途を明らかにしないカネがすなわち悪行三昧、ということではありません。 ただ、国民との信頼関係において、政治家はどんなカネをどういうふうに使うべきなのかについては、不断の見直しが必要ではないでしょうか。10年前の常識も現代では非常識になりえます。