新首相・石破茂が考える<政治とカネ問題>。「政治家はどんなカネをどう使うべきか、不断の見直しが必要。10年前の常識も現代では非常識に」
◆政党助成金の捉え方 兎にも角にも実態を正直に説明することです。我々がどういう個人、企業団体からどれくらいの政治資金をいただいていて、それを何にどう使っているのか。 そのことがなぜ民主主義のコスト、すなわち政治活動の経費(秘書人件費、事務所維持費、政策立案経費、選挙経費)として許容されるのか。とことん見せ、批判を受け、改善し、そうなのか、と理解してもらうことです。 その糸口として、国民の血税から支給される政党助成金の話から始めるのはいかがでしょうか。 1996年の政治改革では、選挙制度の変更に加え、政治家が無理してカネ集めをしなくて済むように、国民一人コーヒー1杯分程度(250円)、1億2000万人をかけておよそ300億円強の税金が各党に交付されることになりました(共産党は受給辞退)。国会議員一人当たり4000万円くらいになりますか。 それだけ税で出しているのになぜそれ以上のカネがいるの? ということをよく聞かれます。国民の本音でしょう。 その質問から逃げてはいけないのです。中には、「そんなにかからない」という人もいますが、それは選挙区に対してどのような活動をするかによって変わってくるのです。 多くの人は、議員個人で使えるカネが4000万円だと思い込みますが、実態は、小企業の経費全体のようなものです。 個人年収4000万円と聞けば「贅沢だ」と思われるでしょうが、社員10人の会社の経費が4000万円と聞けばどうでしょう。「それでやっていけるの?」と思われる方のほうが多いのではないでしょうか? そこから話が始まるのです。今回の事件でむしろ、私たちはいい機会をいただいたと捉え、これを機に政治とカネの実態を改めて、オープンに議論すべきだと思います。
◆「ユートピア政治研究会」はカネを徹底調査した リクルート事件のことを思い出します。 88年の夏に発覚、私たちは当時の当選1回生10名でその秋に、武村正義衆院議員を座長に「ユートピア政治研究会」を結成し、政治活動になぜ、どのようなお金がどれほどかかるのか、徹底調査したことがあります。そして、その結果を公表しました。 もちろん個人差はありましたが、おおむね平均して年間1億円もかかっていたことに我々自身が改めて愕然としたことを覚えています。 第二のユートピア議連を作るべき、などと申し上げるつもりはありません。ただ、議員たちが自らの政治とお金の実態について、それなりのリスクを負って、国民に対し説明をした、という行為そのものは、一定の評価を受けたと思います。 今の政治刷新本部の動きを見る限り、どうしても受動的な姿勢を感じてしまうのは私だけでしょうか。 私は一貫して、国民が納得できるようなことを前倒しでやるべきだ、と申し上げてきました。 東京地検特捜部の捜査結果を受けて、その解明された事実関係に基づいた刷新策を講じるのは、最低限の仕事ですが、もっと国民を信用し、国民の胸に飛び込んでいくつもりで、これからの政治とカネのあり方を抜本的に議論するべきではないでしょうか。 ※本稿は、『保守政治家 わが政策、わが天命』(講談社)の一部を再編集したものです。
石破茂,倉重篤郎