漠然と「健康にいい」と言われても……
情報を比べる場合の注意点
健康や医療の情報を見聞きしたときは、一つの情報だけで即決せず、違う情報と比べてみることをお勧めします。 例えば、便秘で悩んでいる人が「ベンピトールという薬(実際にはこんな名前の薬はありません!)が便秘の解消に有効だ」という情報を得たとしましょう。仮にその情報自体はウソではなかったとしても、すぐにベンピトールを買ってきて飲むのではなく、他の情報、例えばベンピトール以外の便秘薬の情報や、食べ物や運動など薬以外の便秘対策についての情報にもアンテナを伸ばしましょう。こうして複数の違う情報を集め、それらを比較した上で、自分にとってどんな方法が良いかを判断したいものです。 では、違う情報を比較する場合、どのような点に注意すればよいでしょうか。 まず、「健康にいい」とか「元気になる」といった、健康上のメリットを示す言葉に接したら、どのようなメリットなのかを確認することです。例えば「朝食にりんごを食べるのは健康にいい」という情報が仮に本当だとしても、「健康にいい」が具体的に何を指すのかが分からなければ、別の情報、例えば「朝食に麦飯を食べるのは健康にいい」と比較できません。「健康にいい」などの、漠然と良いイメージのある言葉は、受け取る側が自分に都合よく解釈してしまうことがよくありますが、それ以上の詳しい情報がなければ、話半分に聞いておく程度でよいのではないでしょうか。 この点をクリアして、「寝付きが良くなる」「腰痛が軽くなる」「かぜを引きにくい」といった、健康上のメリットがより具体的に示されている場合、次に注意したいのは、それがどのくらい良くなるのか、程度を確認することです。例えば「背筋を伸ばすと腰痛が軽くなる」という情報が仮に本当だとしても、腰痛がわずかに軽くなったような気がしただけなのか、痛みがやや軽くなったのか、痛みがほとんど気にならないくらいになったのか、同じ「軽くなる」でもかなりの幅があります。軽くなった程度が分からなければ、別の情報、例えば「背中をさすると腰痛が軽くなる」と比較することができません。また、メリットだけに目を奪われずに、何かデメリットがないかという点にも注意したいものです。 程度を示す言葉には、前述の「わずかに」「やや」「ほとんど」の他にもたくさんあります。さらに、「20%」「5割」などと数字で表されていたら、程度をより具体的に把握することができるでしょう。ただし、数字にも誤解を招きやすい表現があります。これについては次の機会に紹介します。 北澤京子(きたざわ きょうこ) 医療ジャーナリスト 京都薬科大学非常勤講師 *『月刊糖尿病ライフさかえ 2023年12月号』「賢く付き合おう! 健康・医療情報」より