「幻想を振りまく政治と決別せよ」 石破新総理が野党時代に熱く語っていたこと
国民を信じよ
突き詰めた議論をすることなく問題を先送りしてきた政治。全体の利益よりも個の利益を優先させ、最後は空気に任せて「やむを得ない」との選択をしてきた政治。その結果が、今日の状況を招いてしまいました。財政しかり、憲法問題が底流にある安全保障しかり、社会保障や農業、原発もまたしかりです。 「政治家の仕事は勇気と真心をもって真実を語ることだ」──政治の世界に身を投じて間もない頃に、渡辺美智雄先生に教えられたことです。 自分は真実を極める真摯(しんし)さを、それを語る勇気を、そして国民にご理解いただける真心を持っているか。自らの至らなさを日々実感しながらも、常に自分に問いかけています。 30年近く前、私が議員になったばかりのころ、リクルート事件などの不祥事が相次ぎ、政治不信の解消が叫ばれました。政治倫理の確立、腐敗防止、資金の透明性確保、選挙制度改革……いくつもの「政治改革」が断行されたはずなのに、政治不信は解消されるどころか、一層の高まりを見せ、今や民主主義は崩壊寸前の危機に瀕(ひん)しています。 国民が政治家を信じていない。それは確かにその通りです。 では、政治家は国民を信じているのか。 「どうせ国民に難しいことはわからないのだ」、「こんなことを言ったら票が減る」といって真実を語る真摯さも勇気も持たない。誰も聞いていなくても街頭に立ち、必死に訴え、一人一人を説得するという国民に向き合う真心を持たない。それで国民を信じていると言えるのか。実は国民を信用していない政治家が、どうして国民に信頼されるのか。私は最近つくづくそう思うのです。 突き詰めて真剣に考えれば、日本に残された時間は実に短く、政策選択の幅は恐ろしく狭いのです。国民を信じて、勇気と真心をもって真実を語る政治を何としても実現するために、全身全霊を尽くしていきたいと願っています。
デイリー新潮編集部
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