「幻想を振りまく政治と決別せよ」 石破新総理が野党時代に熱く語っていたこと
小渕恵三総理が誕生した時、支持率は極めて低いものでした。「冷めたピザ」と海外からも酷評されました。しかし、じわじわと支持率は上がっていきました。それは政策の是非ということ以前に、小渕さんが常に自分の言葉で正直に国民に語りかけていたからだと私は考えています。
小泉元総理の本気
小泉元総理の人気について、口にするワンフレーズの巧みさ、パフォーマンスの上手さを要因とする人がいます。それも一面の真理でしょうが、私は、小泉さんの人気の肝の部分は、「痛みに耐えよう」ということを正直に国民に語ったところにあると思っています。それまで、そんな言い方をした人はいませんでした。 小泉さんは、「痛みに耐えれば、その後にいいことがある」と本気で信じて、それを口にしたのです。その本気がわかったから、国民は支持をして、結果として強いリーダーになりました。誰の懐(ふところ)も痛まない、それでいて誰もが得をするような政策は存在しません。そのような幻想を振りまく政治とは、もう訣別(けつべつ)すべきです。 かつての日本は、伸び盛りの青年でした。成長期の子供というのは、少々偏食だろうが、無茶をしようが、すくすくと背が伸びていく。ちょっと病気になっても、一晩寝たり、売薬を飲んだりすればかんたんに治る。そういうものです。でも、いまの日本はそうではありません。中年になると、いつまでも若いつもりで無茶な運動をしたり、徹夜で酒を飲んだりすれば、すぐに体調を崩します。生活習慣病を抱えていれば、継続的に治療を受けなければならないし、食生活にも気をつけなくてはなりません。手術が必要な場合もあります。 特効薬のような政策を口にする行為は、生活習慣病の患者に対して、「好きなものだけ食べていればいいんですよ。ストレスが一番体に悪いですからね。甘いものが好きなら、どんどん甘いものを食べてください」と言うのと同じです。そんなアドバイスに乗ったら、寿命を縮めるだけです。 そして、そのことを多くの日本人はすでに知っています。だから、甘言を弄(ろう)する政治家の賞味期限は短くなっていくでしょう。きっとこの先も、「甘さ」を売りにする者は出てくることと思います。「私(たち)に任せれば、万事あっという間に解決します」と。 しかし、「そんなウソにはもうだまされないぞ」ときっぱりはねつける叡智が、日本人にはあります。少なくとも私はそう信じています。