実は今日本にいない「在日中国人」が増えていた…「経営・管理ビザ」悪用する中国人たち
日本は更新チェックが「ゆるい」
その専門家は次のようにいう。 「在留資格は1個だけ、というものではなく、複数所有が可能なものです。ですので、日本の経営・管理ビザ、アメリカのグリーンカード、シンガポールの永住権など、複数の在留資格をリスクヘッジとして所有しておき、世界中を回遊魚のように自由に動き回っている人は、中国の資産家に少なくありません」 そのため、冒頭にも書いた通り、たとえば、日本には1年のうち3カ月未満しか住んでいない「隠れ移住者」もいるそうだが、日本政府にそれ(滞在日数)を調査されることはなく、更新の際のチェックもかなり「ゆるい」という。赤字にならない程度に事業を行っていれば、更新するのは比較的簡単で、日本に滞在できるし、中国に頻繁に戻ってもいい。 専門家によると、いずれ、日本の永住権を取得したい場合は3年間の経営・管理ビザを取得する必要があり、1年のビザを毎年更新し続けているだけでは難しいが、将来、どこに住むかをまだ明確に決めていない経営者にとっては、1年の在留資格をもらえるだけでも十分リスクヘッジになる、ということなのかもしれない。 そういえば、私が以前、取材した20代のインフルエンサーは、最初はビジネスビザで来日し、その後、経営・管理ビザを取得して日本滞在していたが、頻繁にアメリカやフランス、中国に行き、そこからSNSに写真や動画を投稿しており、一か所にとどまっていない。
ビジネスをしない「ビジネス移住者たち」
だが、これまでの私の記事や著書でも紹介してきた通り、日本に腰を落ち着かせるつもりはなく、「便利だから」という理由で日本のビザを取得していれば、当人にとってはいいかもしれないが、当然、日本への愛着はあまり沸かず、日本語を学ぼうという気も起きない。在日中国人など、誰かがサポートしたり、面倒を見たりしてくれるからだ。 そのため、日本の文化や社会を理解したり、日本の風習やマナーを知り、日本に溶け込もうという気持ちも起きにくくなる。むろん、日本に滞在するなら、日本文化を絶対に理解するべきだ、というわけではない。 だが、いったん、彼らに日本の在留資格を与えておきながら、彼らが日本でどんな事業を行っているか、日本に滞在しているかをチェックしていない、日本政府の管理体制に問題点はないのか、と感じざるを得ない。 一方で、私は世界中を飛び回る優雅な富裕層の例だけではなく、悲惨な例も耳にした。2022年ごろ、ゼロコロナが厳しい中国から、ある中間層の中国人が経営・管理ビザを取得して日本にやってきた。中国の自宅を売り払い、そのお金(全財産)を元手に、すべてを捨てて来日したが、一般の会社員だったので、自分で事業を起こした経験やノウハウがない。 昨今来日している人に多いが、日本との接点もあまりない。おそらく、アドバイスしてくれる在日中国人の友人も、あまりいなかったのだろう。そのため、最初のうちは、貯金を切り崩して、慣れない日本で生活していたが、お金はなくなる一方で、そのうち、工場でアルバイトを始めたという。 だが、経営・管理ビザで来日している以上、日本で何らかの事業、ビジネスを行わなければならず、工場での仕事は「資格外活動」に当たり、不法就労に該当してしまう。その人は、それが発覚してしまい、ビザの更新ができず、強制的に帰国させられたそうだ。教えてくれた専門家によると、その人は30代で、幼い子どもを含む家族3人で決死の覚悟で来日したが、その後、連絡は途絶え、行方不明だそうだ。 ほかにも、経営・管理ビザを取得して来日していながら、日本できちんとした事業を行わず、違法な白タクのビジネスに手を出し、それがバレて、逮捕されたケースなどもあるという。私の友人の友人にも、「ひまだから日本でカフェでもやる」と始めたが、実際にはカフェがやりたいわけではなく、ブラブラしているという人もいる。 いずれにしても、本当に日本で事業をやりたいから経営・管理ビザを取得するのではなく、「中国を脱出したい」、あるいは「便利だから」という気持ちで、手っ取り早く取得できるビザを取ることから問題が起きるわけだが、当然ながら、ビザの取得には資金もかかるし、リスクも伴う。 だが、日本政府は彼らへの管理体制を強化するどころか、今後、外国人が起業しやすい環境を作るため、経営・管理ビザの要件を緩和する方針であるという。現在も「ゆるい」といわれている日本のビザが、さらに取得しやすくなることで、外国人による社会問題が増える、あるいは社会問題に発展する可能性はないのだろうか、と考えさせられる。 【つづきを読む】『「山梨で大量ブドウ狩り」日本で“脱税”する中国人が爆増中…行われていた「驚愕の手口」』では、日本で起きている中国人たちによる被害の実態を解説する。彼らは日本にSNSを用いた巨大コミュニティをつくって活動していた。
中島 恵(ジャーナリスト)