もしかして「意図的に作られた記憶障害」か!?

三瓶がミヤビを救うために、脳のMRI画像を確認したところ、記憶障害の原因が見当たらないというのだ。その裏に大迫教授の陰謀が匂い始める。関東医大を含めて、地域医療の金と人事を牛耳る権力者・西島秀雄（ゲテモノ食いの悪役で凄みを発揮する酒向芳）と通じているらしく、ミヤビの事故もどうやら関係しているように見える。大迫の部下で、カテーテル手術の名手である綾野楓（岡山天音）も何か知っている様子。西島の孫娘（生田絵梨花）との政略結婚を控えてはいるが、元同僚だったミヤビに近づいてくるのも、恋心ではなく監視の役目かもしれず……。 つまり、ミヤビは意図的に記憶障害にさせられている可能性が浮上。病と懸命に闘う元医師の物語と思いきや、医療サスペンス風味が増してきたわけだ。もしやミヤビは黒い証拠を握ったために社会的に抹殺されたのか、あるいは権力者にとって都合の悪い存在だったのか。三瓶はこの陰謀を阻止するべく、ミヤビの記憶障害を解明しようとしているのか。医療サスペンスモノは多作で、毎クール必ずといっていいほど存在するのだが、ヒロインにここまでの苛酷な苦行を背負わせた分、そのからくりと行く末も気になってしまう。

花の健気さ、若葉の素っ気なさ、リアリティ追求の妙

過酷な日常に加えて、心揺らぐ展開。誰を信じていいのかわからなくなるミヤビの不安を、花が表情できっちり魅せる。あきらめてもくさることなく健気に丁寧に生き、記憶障害で自分を信用できないつらさも口にはしない。トーン低めで落ち着いたミヤビを杉咲花が好演している。そばかすメークもミヤビの性格を表現する好手だ。 また、若葉竜也も勤務医のリアリティを追求している。愛想笑いや作り笑顔をほとんどせず（子どもに対しては笑顔をみせて敵意がないことを実証しようとする）、急患には迅速に対応し、医療のあるべき形を体現。病院内に住み着いた生活感と、救命への志の高さを醸し出している。 実際に忙しすぎて病院に泊まりっぱなしの医師がいるのは確かだが、ドラマになると急にリアリティがなくなる。なんか全部整ってんだよな、髪も肌も立ち居振る舞いも。ところが、若葉はどうだ。髪ボサボサ、唇カサカサ、ヒゲ剃らず。顔色の悪さもクマも隠さず、本当に24時間休みなく医療に従事している感がハンパないわけ。しかも最低限のセリフで知性を感じさせ、感情の抑制を表現。とはいえ、例外もある。ミヤビに近づく綾野に「あの野郎、ぶっとばします。大丈夫です、昨日ロッキー観たんで」と息巻いたときはちょっと可笑しくて、可愛げもチラ見せした若葉。過去、外見ばかりで中身が伴わないまま、居丈高に天才医師を演じたアイドルに、若葉の爪の垢を煎じて溶かして浴びせたい気分だ。 そうそう、リアリティといえば、吉瀬美智子が色香を封印して珍しく厳格な看護師長を演じている。最初、吉瀬と気づかないくらい、厳しい表情。厳しすぎる看護師長の背景には悔しい過去があり、医療の安全を守ろうとする矜持も第3話で描かれた。でも酔っぱらうと歌い出すというギャップも含めて、適役だと思う。総じて『アンメット』のメークが病院のリアリティを追求している印象があり、そこもちゃんと評価しておきたい。 ということで、引き続きこの病院を注視していこうと思う。なにはともあれ、ミヤビの記憶障害の原因を知りたくてうずうず。心因性？薬物性？

『アンメット～ある脳外科医の日記～』 カンテレ　毎週月曜夜22時00分～ 原作：子鹿ゆずる（原作）／大槻閑人（漫画）　脚本：篠崎絵里子（※崎はたつさき）　音楽：fox capture plan　演出：Yuki Saito、本橋圭太　プロデューサー：米田孝、本郷達也　制作協力：MMJ　 出演：杉咲花、若葉竜也、岡山天音、生田絵梨花、山谷花純、尾崎匠海(INI）、中村里帆、安井順平、野呂佳代、千葉雄大、小市慢太郎、酒向芳、吉瀬美智子、井浦新ほか