北朝鮮による「ハローキティ無断使用」に日本が抗議できない「意外な理由」
工場で見た外国キャラクター商品
北朝鮮の衣服や靴・カバン・食品などの工場へ行くと、外国有名メーカーの製品が並んでいることは珍しくない。そうした事業所には、自社製品を紹介する立派な展示場が設けられている。その一角に、必ずと言って良いほど外国製品が並んでいる。「平壌(ピョンヤン)子ども食品工場」には、和光堂の粉ミルク「はいはい」の大缶が置かれていた。 「平壌カバン工場」では、「敬愛する最高指導者 金正恩同士から贈られたカバン」と書かれたプレートともに、大量のサンプルのカバンが展示されている。その中には「ミッキーマウス」「ハローキティ」、そして米国のテレビアニメでNHKのEテレでも放送されている「スポンジ・ボブ」などのキャラクターのリュックサックも並んでいた。 「この製品はどういう物なのか」と、いくつもの工場で質問してみた。すると「優れた外国製品を、自社製品製造の参考にしている」というのだ。これは、北朝鮮のさまざまな分野で行われている。優秀な模範を作っておいて、それに追いつけ追い越せという方法である。“手本”としている高品質の外国製品をわざわざ並べて展示し、自社製品の水準の高さを示そうとしているのだ。 こうした輸入品だけでなく、北朝鮮で製造した可能性が高いキャラクターグッズもたびたび見かけた。動物園や大規模な施設では、学校から集団で見学に訪れている子どもたちと良く出会う。その中には、「ミ二ーマウス」のリュックサックを背負った女の子が結構いたのだ。 中国でライセンス生産されたディズニーのキャラクターグッズは、日本での販売価格とあまり変わらないようなので、北朝鮮が輸入しているとしても流通量はかなり少ないだろう。つまり、北朝鮮の工場で生産されている可能性が高い。
意外なところにもディズニー
著作権にも期限がある。日本では、著作者の死後70年とされている。現在、「ディズニー」の古いキャラクターは次々と著作権が切れている。だが、そうではないディズニーと北朝鮮では出会う。 平壌市内西部にある「万景台(マンギョンデ)学生少年宮殿」は、青少年が課外学習をする巨大な施設だ。海外からの見学者も多く、子どもたちの伝統的な楽器演奏や踊り、書道・刺繍などを教室内で見学できる。それが終われば施設内の大劇場で、子どもたちの極めてレベルの高い歌や踊りの公演を鑑賞するようになっている。 公演内容はひんぱんに変わるのだが、2019年5月には「白雪姫と7人の小人」が登場した。衣装は、ディズニーが1937年制作・1950年公開のアニメーション映画『白雪姫』にそっくりなのだ。登場した「小人」役は、ちゃんと7人だった。 「白雪姫」には他の場所でも出会っている。平壌市内にある「玉流(オンニュ)児童病院」の廊下の壁面である。ここの白雪姫は、アニメーターの高橋信也氏が描いたものとほぼ同じである。このすぐ隣には「ミッキーマウス」や「ミニーマウス」などの絵もある。 このように北朝鮮では、海外で生まれたキャラクターを無断使用していると思われる事例が多数ある。ところが、である。こうした北朝鮮の無断使用を、何と日本は問題にすることができないのだ。
