なぜ今「日本発」ローカルチェーンが必要なのか──インターネットにおけるLANの役割に喩えた「Japan Smart Chain」伊藤穰一氏プレゼンテーション全文とQ&A
ローカルなブロックチェーンの重要性
イーサリアムやビットコインみたいにグローバルに、しっかりしたプロトコルはたくさんある。ですが、インターネットが良い例で、パブリックインターネットはあるけども、会社の中とか家の中にはLANがあって、ローカルで信用できる人たちのネットワークと、世の中に繋げるためのネットワークが必要なのと同じで、イーサリアムやビットコインは絶対残ると思うけれど、ローカルにはローカルなチェーンがあってもいいのではないか。ローカルなチェーンの中で安全保障を考えたり、個人情報を管理する。 イーサリアムは、グローバルなコミュニティのほかに、アメリカやヨーロッパのコミュニティが強いのですが、日本で何かトラブルがあったら、信頼できる、顔が見える人たち同士で決めるべきではないか。もう1つは日本は一生懸命、Web3を進めて、いろいろな政策ができていますが、まだ用途によってはパブリックチェーンは使えないので、タイミング的に今すぐ動くためにはローカルのプロトコルが必要ではないか。 Japan Smart Chainでは英語で「Sovereignty(ソブリンティ)」と言っていますが、主権性が持てるチェーンが必要と考えた。 重要なことは、イーサリアムときわめて一致したプロトコルで、ほぼイーサリアムそのままのローカルチェーン。家の中でも、TCP/IPというインターネットプロトコルを使っているのと同じこと。プログラマーの数も、イーサリアム・バーチャル・マシン(EVM)のプログラマーは圧倒的に多いので、(イーサリアム向けの)アプリケーションがほぼそのまま動くようなローカルチェーンというのがJapan Smart Chainの設計です。 皆さんもきっと理解していると思いますが、Web3はちょっとバブルでした。バブルの前には、2018年にコインチェックがハックされて、非常に規制が厳しくなった。日本の暗号資産業界は「ペナルティボックス」に入った。その間、アメリカ、ヨーロッパは遊びまくって、そしていろいろなトラブルがあって、ついにFTXが破綻して、アメリカはもう冷えてしまった。 日本は自民党web3PTも一生懸命頑張って、いろいろ法律を変えて、日本の大企業は良くも悪くも、ゆっくりで、やりだすとなかなか止まらないので、世界中が冬になっても、どんどん作っていった。冬の間に作ることはすごく重要で、サマーのときはゴミのようなプロジェクトでも儲かってしまうので、ゴミのようなプロジェクトもあるし、本来、長期のしっかりしたセキュリティを良くしたものを作るべきプログラマーたちはみんな短期のプロジェクトに行ってしまう。 このゴミが作れない時期に作られた、いろいろなテクノロジーが日本からできてくる。来年の第1四半期ぐらいに、大企業のプロジェクトがたくさん出てくるとすると、それに向けて日本の法律に沿ったブロックチェーンができることはすごく重要です。 また今、すごく大きな波が来ている。日本は、Web2は波の後ろで一生懸命パドルしても全然追いつかなかったけれど、1周遅れのフロントランナーとして、たまたま今、波の前にいる。波が来たときに動き出すと、やってみると実はいろいろ難しくて、波から落ちないで乗り続けられるかが重要です。 冬の間にコツコツ作ったチームが、これからプロジェクトを出していく。このプロジェクトはそのための1つの重要なインフラだと思っています。