作家志望のお笑い芸人・斉藤紳士さんと元祖カリスマ書店員の間室道子さんによる「極上の読書案内」。
本は何を読むかと同じくらい いつ、どの順番で読むかも大事。
斉藤 間室さんは子どもの頃から本好きだったんですか? 間室 私は書店の娘なんです。だから子どもの頃から周りに本がたくさんあるのが当たり前でした。小学1年生の時、初めて自分の意思で読んだのがエーリッヒ・ケストナーの『点子ちゃんとアントン』。マイ・ファースト・ブックがこれじゃなければ、私は今こういう人間になっていないはず。本って何を読むかと同じくらい、いつ、どの順番で読むかも大事なんですよね。 斉藤 それほど当時の間室さんにとって面白かったということですか。 間室 この本はミステリーとして一級品なんです。なんて面白いんだろうって思って、ミステリーが大好きになりました。そこから広がって純文学も何でも読みましたけど。斉藤さんのマイ・ファースト・ブックは? 斉藤 子どもの頃は全く読んでいなかったんですが、小学4年生の時、教科書に載っていた芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を読んでものすごい衝撃を受けたんです。それまでは漫画しか読んでいなくて、物語といえば勧善懲悪みたいな単純な展開しかないと思っていたのが、いくら悪人とはいえカンダタが最後に糸をぷつんと切られて終わる。こんな世界があるのか!と。それで芥川のほかの作品を読んでみたくなって、『杜子春』を手に取ったんですが、最後まで読み通せませんでした。 間室 途中下車したんですね(笑)。 斉藤 もう少し読書の習慣を身につけてから再挑戦しようと思い、小学5年生の時に1年間かけてルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズを全巻読んだんです。ちなみに僕の芸名の「紳士」はルパンの「怪盗紳士」から取ってます。その後いろいろな本を読む中で純文学に惹かれて、芥川賞受賞作なども追いかけるようになりました。 間室 ご自分で小説も書いていて、これまでに4度、新人文学賞の最終候補に残ったとか。 斉藤 小説を書いていると、自分でも思ってもみなかった方向に話が展開していくことがあるんです。お笑いのネタ作りにも通じるんですが、最初に書こうと思っていたこととは全く違うのに、書き終えてみるとそこが核になっていたりする。そういうことを楽しみながら、今後も書き続けたいですね。