天皇陛下61歳会見(全文)オンラインでの活動に新たな可能性見出せたのは大きな発見
コロナ禍で自ら命絶つ人増えていることは痛ましい
この1年は、コロナ禍に翻弄されてきました。愛する方を失ったご家族や、ご友人のお悲しみはいかばかりであったことでしょう。心から哀悼の意を表します。また、コロナ禍の閉塞感からでしょうか、自ら命を絶つ人が増えていることも極めて痛ましいことで、皆でなんとか防がなくてはなりません。その一方で、強い使命感を持って医療に取り組んできた方々や、保健所などで現場の対応に当たってきた関係者をはじめ、高齢者や障害者など社会的に弱い立場にある人々を支えてきた関係者や、子ども食堂のような困難な状況に置かれた子どもたちを支援してきた関係者など、多くの方々からお話を伺う機会を得、皆さんのありがたい尽力に思いをより深くいたしました。このような方々に対し、国民の間で感謝の念を広く共有することができた1年となりました。 このところ、新規感染者の数は幸いにして全国的に減少傾向に転じているようです。また、新型コロナウイルス・ワクチンの接種も始まりました。今しばらく国民の皆さんが痛みを分かち合い、協力し合いながらコロナ禍を忍耐強く乗り越える先に、明るい将来が開けることを心待ちにしております。 同時に、現在の状況を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの国民の皆さんと直接触れ合うことが極めて難しくなっていることを、私たち2人も残念に思っております。このような状況の中で、人々とのつながりを築き、国民の皆さんの力になるために私たちに何ができるかを考え、宮内庁とも相談して、オンラインでの交流の可能性が検討されました。昨年8月には「新型コロナウイルス感染症大流行下の水防災に関する国際オンライン会議」にお誘いをいただいて、オンラインで聴講し、会議後に参加者の方々ともオンラインでお話ししてみたところ、臨場感があり、人と人とのつながりを肌で感じることができました。 そこで、その後さらに検討を重ね、昨年秋以降、オンラインで日本赤十字社の医療現場、高齢者や障害者の仕事や活動の場、そして今年に入ってからは、昨年7月の豪雨災害の被災市町村を訪問し、それぞれ関係者の皆さんとお話をすることができました。このオンライン訪問には、感染症対策としての利点以外にも、同時に複数の場所にいる人々に会うことや、中山間地域など通常では訪問が難しい場所でも訪問できるという利点があることを実感いたしました。 この1年は、公務にさまざまな制約が生じ、例えば新年の一般参賀を行うことも難しい状態でしたが、代わりにビデオメッセージで国民の皆さんに私たちの気持ちをお話しすることができたことも含め、オンラインによる活動に新たな可能性を見出せたことは大きな発見と言えます。地方を訪問する際の駅頭や沿道も含めて、現地で多くの方々と同じ体験を共有し、その土地その土地の雰囲気を肌で感じるなど、実際の訪問でなければなし得ない部分はあるものの、感染が収束しない現状では、オンラインは有効な手段と考えられます。オンラインにはオンラインなりの課題もあるでしょうが、引き続き状況に応じた形で活用していきたいと思います。