【確定申告】カフェで作業したときの「コーヒー代」、仕事着の「スーツ代」…どこまで計上できる?〈きわどい経費〉の判定基準【税理士がまとめて解説】
カフェで仕事をした際のカフェ代や、スーツ・ビジネスバッグ・メガネなどの被服費、飲食代やゴルフ代などの交際費…。個人事業主はどこまで経費にできるのでしょうか? 個人事業主にとって、これらは判断が難しいという意味で「きわどい経費」と言えます。板山翔税理士が、経費にできるか否かを見分けるための基本的な考え方や、筆者の見解を紹介します。
――カフェ代やスーツ代、飲食代などの交際費って、どこまで経費にしていいのでしょうか? 板山翔税理士:「個人事業主は仕事とプライベートの区別が難しいので、判断に迷いますよね。今日はこういったきわどい経費を集めて、どこまで経費にできるのか、まとめて解説していきます。」
よく質問される「きわどい経費」をまとめて解説
YouTube「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」>> 1人でカフェで仕事をしたときのカフェ代、スーツやビジネスバッグ、メガネなどの被服費、飲食代やゴルフ代などの交際費etc、経費にしていいものかどうか悩ましい支払いってたくさんありますよね。 その他にも新聞雑誌の購読料、神社で祈祷を受けた祈祷料、美容室代や化粧品代、ロータリークラブの会費など、きわどい経費を挙げ出したらキリがありません。 個人事業主は仕事とプライベートの区別が難しく、また、どこまで経費にしていいのか、詳しく書いてくれている法律や公式のパンフレットのようなものもないので、悩ましいのも当然です。 私たち税理士でも、100%経費にできるとは断言できないグレーな部分はいくらでもありますし、ネットで調べても曖昧な答えしか載ってないことも多いです。 そこで本稿では、こういった特に質問が多いきわどい経費を集めて、それぞれ経費にできるのか否か、税理士である私の見解を具体的に解説していきます。 私の言う通りにすれば100%経費にできるというものではありませんが、信頼性の高い専門家の意見として、ぜひ参考にしてください。
そもそも「法律上、経費として認められるもの」とは?
きわどい経費一つ一つについて具体的に解説する前に、まず法律上はどこまで経費として認められているのか? 基本的な考え方を簡単に説明しておきます。 ■必要経費の定義 所得税法第37条に定められている、必要経費の定義を要約すると次のとおりです。 ---------------------------------------- 【必要経費の定義(所得税法第37条)】 「事業所得(又は不動産所得、雑所得)の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、 1.売上原価その他総収入金額を得るため直接に要した費用の額 2.販売費、一般管理費その他業務について生じた費用の額 とする。」 ---------------------------------------- このようにざっくりと規定されているだけで、これだけを見ても、どこまで販売費や一般管理費として認めてもらえるのか? 自分が必要経費だと思えば経費として認めてもらえるのか?といった線引きはわかりません。 ■必要経費に関する過去の判例 そこで当然、どこまで経費にできるのか、過去に何度も裁判で争われてきました。 そして過去の判例を見てみると、必要経費であるかどうかは自分が主観的に決めていいものではなくて、第三者が客観的に見ても必要経費であると認められるものでなければならないという判断がされています。 ----------------------------------- 【必要経費に関する過去の判例】 1.「事業遂行のために必要か否かの判断は,単に事業主の主観的判断のみではなく,通常かつ必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものでなければならない」(昭53.4.24東京地裁) 2.「必要経費として総所得金額から控除されうるためには,客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係をもち,かつ業務遂行上通常必要な支出であることを要し,その判断は当該事業の業務内容など個別具体的な諸事情に即し社会通念に従って実質的に行われるべきである」(昭61.10.31仙台高裁) ----------------------------------- したがって、自分が事業に必要な支払いだと思っているだけではなくて、商慣習や一般常識などにも照らし合わせて、誰が見ても事業に必要だと思ってもらえるようなものではないと、必要経費として認めてもらえないということです。 ■家事関連費の場合 また、仕事とプライベートの両方で使うような経費(家事関連費)は必要経費として認めてもらえるのか?というと、所得税法上、「原則は経費にできないが、仕事に必要な部分を明らかに区分することができる場合のみ経費にできる」といった取り扱いになっています。 そのため、今日解説する飲食代などのきわどい経費については、「80%は仕事の話をして、20%はプライベートの話をした」なんて合理的に区分しようがないので、プライベートも混在しているようなものであれば経費計上は難しいです。 スマホ代や車両費などの家事関連費の合理的な経費計上割合の決め方について詳しく知りたい方は、関連記事 『個人事業主の「スマホ代」や「自宅兼事務所の家賃」…いくらまで「経費」になる?税務署に認められる〈合理的な経費計上割合〉【税理士が解説】』 を参照してください。 ■必要経費として認められるための「2つの条件」 以上のことから、法律的に必要経費として認めてもらえるための条件を2つにまとめると、次のとおりとなります。 【必要経費の2つの条件】 1. 事業主の主観だけではなく、客観的に見ても事業に必要な支出であること 2. 家事関連費である場合は、事業に必要な部分を合理的に区分できること