【確定申告】カフェで作業したときの「コーヒー代」、仕事着の「スーツ代」…どこまで計上できる?〈きわどい経費〉の判定基準【税理士がまとめて解説】
「きわどい経費」はどこまで経費にできるのか?
必要経費の条件が明らかになったところで、いよいよこれをもとに、きわどい経費一つ一つについて、どこまで経費にできるのか、具体的に解説していきます。 <カフェ代などの雑費> (1)カフェ代 ⇒1人でカフェで仕事をしたときのカフェ代については、雑費や会議費などとして経費計上できます(カフェ代に限らず、勘定科目は何費にしてもらっても構いません。必要経費に変わりはないので)。 ただし、食事や休憩でカフェを利用しただけの場合は、経費計上はできません(複数人でカフェに行った場合については、後述する「飲食代」の部分を参照してください)。 一昔前なら、カフェで1人で仕事をしていたとしても、ほんとにカフェで仕事なんてしてるの? カフェで仕事する必要ある?なんて思われることも多く、経費にしづらい面はたしかにありました。 しかし、今はノートパソコン一つで仕事ができる時代で、カフェにもWi-Fiやコンセントが設置されていることが多く、カフェでZoom会議に参加している人もよく見かけます。自宅だと家族がいて作業に集中できないので、わざわざカフェに行く人も多いです。 よって、仕事をするためにカフェでコーヒーやパンなどの軽食を注文することは、客観的に見ても事業に必要な支出だと言えるでしょう。 とはいえ、カフェで昼食や夕食をとった場合には、例えそのあと仕事をしていたとしても、経費計上はしない方が無難です。 というのも、少なくとも1人で食事している間は仕事はしていないですし、支払の目的も客観的に見れば仕事のためというより食事のためでもあるので、家事関連費として仕事に必要な部分を区分できないからです。 (2)新聞代や雑誌代 ⇒自分の事業と関連性が深い専門紙や業界紙の購読料については、雑費や新聞図書費として経費計上できます。 しかし、一般家庭でも読まれるような一般紙の購読料については、普通は経費計上できません。仕事のためにわざわざ新聞取って読んでるのに…と思う人も多いと思いますが、これは一般教養を磨くためでもあるため、仕事に必要な部分を区分できないからです。 もちろん美容院のように、お客さんに読んでもらうために一般紙を買っている場合や、ライターが記事を書く情報収集のために一般紙を購入している場合などは、仕事に直結しているため経費計上が可能です。 (3)祈祷料 ⇒商売繫盛などのために神社で祈祷してもらったとしても、その祈祷料は経費計上できません。これが事業に必要かどうかは個人の宗教観によるため、客観的に事業に必要と認められるようなものではないからです。過去の判例でも「宗教的な行為であって、業務との関連性、必要性を欠く」として否認されています。 (4)美容室代や化粧品代 ⇒美容室代や化粧品代は、基本的には経費計上できません。事業をする上で身なりを整えることはもちろん大切なのですが、仕事部分とプライベート部分を区別できないからです。 ただし、日常のカットではなく特別な仕事の前にヘアセットに行った場合や、モデルや俳優などが撮影でしか使わない特別な化粧品を購入した場合など、ほぼ100%仕事のためと言える支出であれば経費計上は可能です。 <スーツ代などの被服費> (1)スーツ代 ⇒仕事でしか使わないスーツ代については、被服費や消耗品費などとして経費計上が可能です。ネットで調べるとスーツはプライベートでも使うため、経費にできないという意見が多いのですが、私はこれに昔から疑問を感じています。仕事以外でスーツを着る場面ってそんなにありますかね? 私は冠婚葬祭は略礼服(ブラックスーツ)で行きますし、ドレスコードがある飲食店はジャケットパンツスタイルで行くため、スーツは仕事でしか使わないものがほとんどです。 客観的に見ても仕事用のペンやパソコンより、よほどスーツの方がプライベートで使わないと思うのですが、なぜかスーツはダメと言う意見が多いです。 たしかに世間が経費にできないと思っているのであれば、それはそれで一般常識として考慮しないといけない面もあるのですけど、私は経費にできると判断しています。 もちろん、たまにプライベートでも着ることがあるようなライトなスーツについては、仕事に必要な部分を区分できないので、経費計上していません。 また注意点としては、個人事業主であるとはいえ、給与所得もあるサラリーマンや会社役員であれば、スーツ代は経費にできません。 というのも給与所得者の場合は、サラリーマンでもスーツやビジネス用品などの経費がかかることを考慮して、給与所得控除という控除をすでに受けられていますので、事業所得の経費としても計上してしまうと、二重で控除を受けているような状態になってしまうからです。 (2)ビジネスバッグ・ビジネスシューズの購入代金 ⇒スーツ代と同じく、仕事でしか使わないビジネスバッグやビジネスシューズの購入代金については、被服費や消耗品費などとして経費計上が可能です。 こちらもプライベートでも使うことがあるバッグやシューズであれば、経費計上は避けましょう。給与所得がある場合もスーツ代と同様に、経費計上はできません。 (3)メガネ・コンタクトの購入代金 ⇒メガネやコンタクトについては、基本的に経費計上はできません。仕事のときしか着けないような特殊なものがあれば別ですが、基本的には仕事が終わったらすぐに外すようなものではなく、仕事に必要な部分を区分できないからです。 <飲食代などの交際費> (1)飲食代 ⇒仕事の打ち合わせや接待などで、カフェや飲食店で食事をした場合の飲食代は、会議費や接待交際費として経費計上できます。 ただし、冒頭で説明したとおり、プライベートと混同してしまうと経費にはできないので、飲食の目的やメンバー、食事に行く頻度などから、事業に必要であると言えるものでなければなりません。 例えば同じようなメンバーで頻繫に食事に行っていると、本当に仕事の話をしているのか? 友達同士でご飯に行っているだけでは?と疑問を持たれてしまいます。 仕事上の付き合いとプライベートな付き合いをきれいに分けることは不可能ですが、少なくとも自分にとっては事業に必要であると思えるものを経費計上しましょう。 (2)ゴルフ代 ⇒顧客や取引先と行ったゴルフのプレー代金については、接待交際費として経費計上できます。ただし、飲食代同様、ゴルフに行く目的やメンバー、頻度などから、接待ではなく趣味でゴルフを楽しんでいるだけだと思われてしまうと、経費として認められない可能性があります。 また、ゴルフクラブやゴルフウェアの購入代金、打ちっぱなしの費用などは経費にはしない方が無難です。これらのゴルフ用品はスーツやビジネスバッグなどのビジネス用品と違って、もともと仕事用というよりプライベートで使うものですし、1人で打ちっぱなしに行くことが事業のためだけであるとも言い難いため、家事関連費と見られる可能性が高いからです。 (3)ロータリークラブなどの会費 ⇒ロータリークラブの入会金や会費は、経費計上はできません。法人であれば交際費にできるのですが、個人事業主の場合は必要経費にできないものとした判例がいくつもあるからです。 ビジネスを拡大するためにこういった会に入って人脈を広げ、実際に売上につながっている人も多いと思うので、経費にしたい気持ちはすごくよくわかります。 しかし、ロータリークラブで行う活動の目的は社会奉仕や地域貢献などであり、客観的に事業に直接関係があるとは言えず、私的な活動との区分もできないため、必要経費とは認めてもらえていません。また、同じく奉仕団体であるライオンズクラブの会費も経費計上はできません。 加えて、同窓会の会費も経費として認められなかった判例があります。本人は仕事の営業のつもりで同窓会に参加していたとしても、同窓会の目的はプライベートな友達同士の付き合いなので、客観的に事業に必要とは言えないだからです。 一方で、BNIのようなビジネスの拡大を目的とする異業種交流会の会費については、経費計上が可能です。