巨大なキャットタワーに暮らす!? 猫と人のより良い暮らしを夢みた家
建築家の山之内淡さんが自邸兼アトリエとして建てたのは、鎌倉の瀟洒な一軒家。30代の夫婦がふたりで暮らす家ですが、人間より大切な“施主”がいたもようです。 モテる我が家の作り方
「2匹の猫を施主として見たて、彼らの住みやすいかたちを模索しました」
「いつかは自分の思い通りの家を建てたい」とは誰しもが夢みることですが、職業が建築家なら? その想いはなおさら強いかもしれません。 “Architecture of Ghost”=人・モノ・動植物などあらゆる ”Ghost” に具体的な建築のかたちを与えるというユニークな建築思想をもつ建築家、山之内淡さんが昨年、自邸兼アトリエとして建てたのは、ふたりの人間と2匹の猫が共生できる家。いえ、というより猫がメインの家⁉ 「ぼくら夫婦は外出もしますが、猫たちにとっては家が世界そのものですよね。長年家族として暮らしている2匹の猫を“施主”として考え、ぼくらの言葉と猫たちの言葉が混ざり合うような建築を目指しました」
緑深い、鎌倉の小高い丘に建つ一軒家は外から見れば普通にスタイリッシュな邸宅ですが、猫のための家とはどんな空間が広がっているのでしょうか。世界的なデザインメディア「design milk」による"Top 10 Architecture Posts of 2023(2023年の建築記事トップ10)"の世界ベスト4位に選出されたという、その名も「A Cat Tree House」にお邪魔します!
23の階層から成る巨大なキャットタワーハウス
室内に一歩入り、まず驚くのは高さ6mもの吹き抜け。キッチンを1階としてその周囲にダイニングやアトリエ、バスルームなどの水回り、そしてベッドルームが多層で展開されています。この感じ、どこかで見たことあるような?
「今回は、2匹の愛猫を“施主”として見立てたため、まずは彼らが過ごしやすいようにキャットタワー(ツリー)のような構造にしています。階層の数は全部で23。ステップの幅や高さも猫たちの身体のサイズに合わせました」
「そしてもうひとつ意識したのは、つかずはなれずという距離感です。猫は自分ひとりの時間も大切にする動物ですよね。そこで、『いるな』という存在は感じるけれど、べったりはしないという適度な距離感を保てるような空間になっています」