イタリアの名門バイクブランド、モト・グッツィ「V100マンデッロ」試乗。100周年の集大成を堪能する
右手のスロットルに丁寧に反応するエンジンは1042ccの排気量から最高出力115HP/8700rpm、最大トルクは105Nm/6750rpmを発揮する。そして、ここで特筆すべくは、3500rpmで最大出力の82%を発揮し、回転リミッターは9500rpm以上を実現していることだ。このエンジン特性の恩恵は、アクセルを大袈裟に開けることなく交通の流れをリードし、時には極低速でのドライバビリティーをも実現させている。
TFT5インチカラーインストルメントの目視では、市街地50km/hで6速2000rpm、高速道路巡航100km/hで6速4000rpm弱といったところ。加減速の扱いやすさでいえば、一切不満のない味付けだった。つまり、どのギアでも、どの速度領域でも加減速の予測がつきやすく、ライダーが求めるパワーデリバリーを完璧に演出しており、巡航においては右手のアクセル開度に忠実にエンジンがまわり続けているのだ。
■ハンドリングと安定性の高さ ハンドリングに関しても、唸らせられた。 ライバル勢に比べて短いホイールベースは、ワインディングでの切り返しも気持ちよく、コナーリングフォースの高さどおりのライントレース性能だ。一方、高速道路での安定性は、低く積み込まれた90度V型エンジンの安定したパワーデリバリーと、ヘッドストック角24.7度のマッチングの良さで快適な巡航を楽しむことができた。路面外乱にも強く、ウエット時にもグリップフィーリングがつかみやすいことはバイクを選ぶ上で重要な要因だ。
心地よいエンジンの鼓動、乗り心地のいいサスペンションセット、コンパクトにまとめられたた取りまわしのよい車体は、ライダーに心地よさと安心感を与えてくれ、完璧なハイクラスサルーンカーを意識させてくれた。 V100マンデッロは、数多くの技術的なチャレンジを取り入れている。そのひとつが「アダプティブ・エアロダイナミクス」を世界で初めて採用したことだ。 これは、フロントカウル後端にあるディフレクターが左右に広がることで、ライダーの体にあたる風圧を緩和させる機能だ。時速35~90km/hの設定で開きはじめ、時速20km/h以下で閉じられる。エンジンの走行モードと速度設定で、介入するタイミングを選ぶことができ、効果は十分に体感できる。併せてフロントのトップスクリーンも電動操作で高さ調整が可能。筆者は運転時に雨に見舞われたが、このディフレクターをレインモードで介入にセットしておいたことと、電動トップスクリーンを上段まで上げたことで、膝まわりから胸まわり、ヘルメットまでが大幅に雨水からプロテクションされることになった。