働き盛り世代に急増! ストレスが原因のふたつの難聴とは?【40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! ②】
耳の老化は20代から始まり、知らないうちに徐々に進行し、40歳を過ぎたあたりから自覚する人が増えてくる。難聴は加齢によるものから、突然片方の耳だけが聞こえにくくなる病気もあり、放っておくと慢性的な難聴になることもあるので注意が必要だ。そんな聴覚の病気について、耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則さんに伺った。
生活習慣病のある人ほど「加齢性難聴」になりやすい!
最近、人の声が聞き取りにくい、時々耳鳴りがするといった症状はないだろうか? 気のせい? 年齢のせい? と、気になりつつも放っている人もいるかもしれない。しかし、なかには一刻も早い診断と治療が必要な耳鳴りや難聴がある。治療が遅れることで、元に戻らずに慢性的な難聴になってしまうかもしれない。 ここでは、特に30代~50代の働き盛りの層にも増えている、耳鳴りや難聴を伴う病気について解説。 「まず、個人差はあるものの、老化現象で誰にでも起こるのが『加齢性難聴』です。この原因は加齢によって、内耳にある蝸牛(かぎゅう)内の有毛細胞(ゆうもうさいぼう)が脱毛することが原因のひとつです。 耳から入った音は外耳、中耳を通って、内耳の蝸牛に届きます。この蝸牛にある有毛細胞の毛が振動して情報を感知し、それを電気信号に変えて脳に伝えています。(※詳しくは第1回<30代~50代に増えている難聴。自分でチェックする簡単な方法とは?>参照) この音の情報をキャッチする有毛細胞の毛が、加齢によって抜けてしまうのです。この現象は症状の差がありますが、年齢を重ねれば誰にでも起こります。ほかに、加齢性難聴を引き起こす原因には、脳に音の情報を伝える聴神経が異常を起こすケースがあります」(石井先生) 脇の下に挟んだ電子体温計が「ピピピッ」と鳴る音が聞こえるだろうか? この音は約8000ヘルツで、聞こえない人はかなり聴力が落ちていて、すでに加齢性難聴が起こっているかも!? 「最近の研究で、生活習慣病がある人は加齢性難聴が早く発症して、早く進行することがわかりました。脂質異常症、高血圧、動脈硬化、糖尿病などがあると、内耳や脳への血流が悪くなり、蝸牛や聴覚神経の働きが低下することで難聴が起こりやすくなるのです。まずはこれらを予防、治療することが加齢性難聴の発症と進行をくい止めることになります。 また、難聴は認知症になる危険因子のひとつであることがわかっています。 脳の神経細胞は単独で働くのではなく、多くの神経細胞同士が情報を伝達し合うネットワークを形成しています。音の情報処理も側頭葉や前頭葉など、さまざまな部位の神経細胞と情報をやりとりしています。難聴になると聴覚のネットワークが使われなくなるので、脳全体の活動が低下すると考えられています。 また、難聴になると人との会話に支障が出るため、外出や人と会う機会が減り、脳へのよい刺激が減少することも一因です」 難聴は認知症のリスクファクターだが、予防することができる。逆に考えると、聞こえ具合で軽度認知障害(MCI)を発見できるかも!? 以前より「テレビの音量を上げないと聞き取れない」「会話でよく聞き返すことが増えた」といったことがある人は注意が必要かもしれない。