【坂口涼太郎×ヒオカ】恥をかきながら、誰かに「捧げる」ものをつくる――表現すること・書くということ
ミモレで連載中の、ライターのヒオカさんと俳優の坂口涼太郎さん。実はこのおふたり、ミモレでのインタビューがきっかけで出会い、トークイベントを開催することに……! 今回はヒオカさんの新著『死ねない理由』(中央公論新社)と、坂口涼太郎さんの「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」連載スタートを記念して開催されたトークイベントから、特別に対談の一部ご紹介します。
貧困は「ヒオカさんだけのものじゃない」と思えた
坂口涼太郎さん(以下、坂口):私がヒオカさんの1冊目のエッセイ『死にそうだけど生きてます』(CCCメディアハウス)を読んで思ったのは、もしかしたら、今まで出会ってきた友達の中にも、ヒオカさんのように貧困家庭で育っていた子がいたかもしれないし、学校のクラスメイトの中にも1人とか2人はこういう子がいたんだよな、ということ。 子供時代ってそういうのがわからなかったし、私自身も想像力が及んでいなかった。私はどちらかというと、家庭環境や学校生活とかはわりと恵まれていた方だと思う。だから結構、衝撃的だったんです。書かれているのはヒオカさんのすごくパーソナルな部分だけど、「ヒオカさんだけのものじゃない」って思ったんだよね。この世界に絶対いるよねって。でも、ヒオカさんは、今はどうなんですか。 ヒオカさん(以下、ヒオカ):生活は相変わらず余裕はないですけど、先日もちゃんみなさんのライブに行ってきましたし、前みたいな「あと700円で生活が終わる……!」みたいな状況はちょっと抜け出しましたね。 坂口:そっかそっか。この2冊目の『死ねない理由』(中央公論新社)でも、生きるにはエンタメだけではダメかもしれないけど、エンタメも必要だ、みたいなことを書いていらっしゃるじゃないですか。 それがね、エンタメを提供している側からするとすごく嬉しかった。自分自身もエンタメに救われて、慰められて、生きてこられたから。だから、どれだけお金がない、どれだけ生活が大変な人にもエンタメって「届くべき」ですし、そういう人に届けるためにできることはしていきたいなって思ってるんです。