夢眠ねむ「全家庭の掲示板に貼るべき」 悪気なく相手をイラつかせる大人にも効く「言い換え図鑑」(レビュー)
「今日のご飯、何がいい?」「カレーでいいよ」「“で”!?“が”いいでしょうよ!」と怒られたことはないだろうか。私は子どもの頃、この手の言葉遣いをしてしまい母にこっ酷く叱られたことがある。今となっては母に心から感謝しているし、叱られずそのままだったらと思うとゾッとする。 この本の“はじめに”にある『わるぎがなくても意地悪な言い方をしてしまうと相手は悲しい思いをするかもしれないね。それに、きみの本当の気持ちやお願いは相手に伝わらないままだよ』の一文は、全学校、全会社、全家庭の掲示板に貼るべきじゃないかしら。たとえ良かれと思って言ったことでも、ほんの少しの伝え方の違いで嫌なやつになってしまうし、良かれの気持ちは全く伝わらない。 この本には例文がたくさん載っている。例えば『相手に直してほしいところがあるとき』。×の回答は「みんな言ってるよ!」で、○の回答は「ぼくは△△したほうがいいと思う」。当たり前に見えるけど、いざという時これができない大人は多い。『相手と何かを決めるとき』の×回答が「どこでもいいよ。なんでもいいよ」と書かれており、婚活してる友達がこういう人とマッチングしてしまいイライラしていたのを思い出す。他にも、なぜそう言いかえたかの理由や考え方、他の言い回しなんかも載っているし、「ここまで優しくは言えないな」という時はまるごと鵜呑みにせず自分にとってちょうどいい具合に参考にするのも勉強になるはずだ。各々の匙加減で取り組んでいけば、自分の中の基準ができていくのではないだろうか。 今の子達はSNSやLINEなど、文字で会話をする機会も多い。後々トラブルに巻き込まれないためにも言いかえ学習は大切だし、人生に必要なテクニックだ。そんなつもりないのに悪く取られちゃうな、と悩んでいる大人にもわかりやすいのでおすすめできる一冊である。 [レビュアー]夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー) 7月14日生まれ。三重県伊賀市出身。多摩美術大学卒業。アイドルグループ「でんば組.inc」の元メンバー。愛称は“ねむきゅん”。みえの国 観光大使。他の著作に『ゆめみやげ』『まろやかな狂気』『夢眠軒の料理』などがある。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
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