繁栄支える巨額の放映権料、スタジアム転用や新ビジネスで収益源を多角化【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑨】
プレミアリーグにはノルウェー代表のアーリン・ハーランド(マンチェスター・シティー)やエジプト代表モハメド・サラ-(リバプール)ら高給の世界的スターが集い、リーグの魅力を高めている。国際サッカー連盟(FIFA)によると、選手の「国際移籍」に伴い2023年にイングランドのクラブが相手側に支払った移籍金は29億5660万ドル(当時のレートで約3900億円)と首位だった。9億9180万ドルで2位だったフランスの約3倍、スペインの約6倍におよび突出している。力の源泉となるのが「欧州一」を誇る集金システムだ。(共同通信=宮毛篤史) 【写真】痛ましい死傷事故が相次ぐ苦難の時代も…世界最高峰のサッカーリーグは、どん底の状況からどうやって成功への道を駆け上ったのか。【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生①】
▽チーム戦力の均衡化で魅力アップ サッカークラブの収入源は大きく分けて、①放映権料、②本拠地スタジアムでのチケット収入など③スポンサー契約など―の3分野に分けられる。プレミアリーグはいずれも他の欧州主要リーグを圧倒するが、商業的成功を特に支えるのが海外で人気の高い放映権料だ。 欧州サッカー連盟(UEFA)によると、プレミアリーグの2022年の放映権収入は30億ユーロ(当時のレートで約4200億円)で首位だった。世界屈指の人気を誇るレアル・マドリードやバルセロナを擁するスペインの1部リーグが14億ユーロで続き、ドイツとイタリアは約10億ユーロだった。 プレミアではリーグが放映権を一元管理し、収入の50%が各クラブに均等に割り振られる。25%はチームの順位に基づき配分され、残る25%はテレビで放送された試合数に応じて支払われる。この結果、他のリーグよりもクラブ間の収入格差が広がりにくく、戦力の均衡に貢献してきた。
下位クラブが上位の強豪を倒す波乱も珍しくない。2015~16年シーズンには、日本代表の岡崎慎司が所属し、2部リーグから昇格1年目だった前シーズンにぎりぎりでプレミア残留を果たしたレスターが優勝する「ミラクル(奇跡)」を演じ、「スポーツ史で最大の番狂わせの一つ」と呼ばれた。 スポーツビジネスを専門とするロンドン大バークベック校のショーン・ハミル教授は「リーグのバランスが良ければ良いほど、結果が不確実であればあるほど、(コンテンツとして)魅力的になるというコンセンサスがスポーツ経済学には多かれ少なかれある。逆に結果がより予測可能になると価値は低下する」と述べ、放映権料の分配システムがリーグ全体の価値を高めていると指摘する。 ▽スタジアムの大型化と多機能化で収益 ただ、右肩上がりで伸びてきた放映権料も国内向けではかつてほどの勢いはなく、財政規律を求めるリーグや欧州サッカー連盟の監視の目は強まっている。実績のある選手や有望な若手を獲得して戦力を向上させるためには、これまで以上に収益源を広げる必要性が高まっている。こうした中で、各クラブが目を付けたのがスタジアムの大型化と多機能化だった。