繁栄支える巨額の放映権料、スタジアム転用や新ビジネスで収益源を多角化【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑨】
1973年には当時全盛だったリーズ・ユナイテッドと契約し、レプリカを売り出して成功を収めた。マンチェスター・ユナイテッド、トットナムなどの人気チームのユニホームも手がけ、レプリカが広がる流れを生んだ。イギリスでは1970年代初頭にはカラーテレビが広く普及し、色鮮やかなユニホームがテレビに映し出された。アドミラルの取り組みは時流に乗ったもので「新たなビジネスモデルを生み出した」と自賛した。 ▽1枚のシャツ販売でクラブに入るお金は? プレミアリーグの商業的成功は各クラブがスポーツメーカーと結ぶ契約料の高騰を招き、レプリカの価格に転嫁された。スポーツビジネスを専門とするPRマーケティング社によると、2013~14年シーズンに43・8ポンドだった大人用の販売価格は67・47ポンドへと5割引き上げられた。アディダスと契約するアーセナルの場合、2024~25年シーズンの半袖レプリカの価格は80ポンド(約1万6000円)だ。
では、レプリカを売って得られる収益はどう配分されるのだろうか?この問いに対し、PRマーケティングのピーター・ロールマン博士(75)は、2023~24年シーズンに80ポンドで売られた「典型的な」レプリカの原材料費や輸送費は全体の10分の1に当たる8ポンドだと試算した。1枚売れるとクラブに4・8ポンドが、販売店には26・4ポンドが入り、製造するメーカーは23・47ポンドを手にするという。ある大手スポーツメーカーの担当者は「レプリカを直販する場合、クラブの利幅はさらに高まる」と解説する。 価格の高騰にかかわらず、レプリカの販売は伸びている。プレミアリーグは欧州にとどまらずアジアなどでも人気が高く、スタジアムを訪れた観光客らが高額であろうと記念のグッズを買い求めることが一因だ。ロールマン氏は「成功し、名の知られたクラブは常に新しいターゲットに目を向けている。クラブはそれぞれのクラブのシャツの独占販売者であり、需要の高まりを考えれば値上げしない手はない」と話す。
ただ、クラブが収益源として観光客を重視する施策を強化するようになればなるほど従来のファンからは不満の声が高まる。トットナムがチケット代の値上げと高齢者に対する優遇措置の縮小を決めると、サポーター団体から怒りの声が上がった。「30年、40年、50年と応援してきたファンにこのようなことをするのは、恥ずべきことだ」。