日本は本当にダメな国なのか? 安野貴博(AIエンジニア)と田原総一朗が語り合った記録がヤバすぎる
東京23区を自動運転タクシー特区にせよ
田原残念ながら今の東京には、ITとAIのイノベーションを生み出して世界を牽引する力はありません。日本は韓国に負けています。インドにも負けています。どうすればいいですか。 安野私は自動運転の技術が非常に有望だと思っています。これから世界に広がる自動運転の市場規模は計り知れません。 田原日本の自動車産業は、電気自動車の開発も自動運転の開発も大きく出遅れています。僕はトヨタの幹部に「なんでトヨタは電気自動車化を本気になって進めないんだ」と言ったことがあるんですよ。ガソリン車やハイブリッド車から電気自動車に切り替えると、トヨタの関連会社の60%から65%が必要なくなり、関連会社の社員がみんな失業してしまうのだそうです。 安野「イノベーションのジレンマ」ですね。強い既存事業が存在すると、その既存事業を守ろうとするあまり、新しい既存事業に対して投資できません。トヨタをはじめとする日本の自動車産業は「イノベーションのジレンマ」の壁にぶつかっています。 アメリカのサンフランシスコや中国の深圳(シンセン)では、もうすでに自動運転タクシーが街中を走っているんですよ。スマホアプリでタクシーを呼ぶと無人の車がピューッとやってきて、車に乗りこむと自動的に目的地へ連れていってくれます。 田原無人バスの社会実験をやっている山間地はどこにもありませんし、日本では無人タクシーなんて1台も走っていません。 安野 東京23区は地下鉄や都バスなど公共交通が発達しているので、無人タクシーがなくても不便ではありません。多摩地区では交通空白地帯がけっこうたくさんあるため、そういう地域では無人タクシーや無人バスのニーズがすごくあります。 東京都知事が思いきって規制緩和をして社会実験に乗り出せば、東京都のスタートアップ企業、新しいベンチャー企業が自動運転産業で世界の勝者になれるかもしれません。もし今何もしなければ、海外の自動運転タクシーの会社が東京に入ってきて「国内の会社は育てられませんでした」で終わってしまうでしょう。 2024年4月からドライバーの労働時間規制が始まったことによって、トラックやハイヤー、タクシードライバーの人手不足が始まっています。自動運転車が必須である将来はすでに明確に見えているのですから、政府と民間が協働して自動運転とAI産業を伸ばしていくしかありません。ですから私は、東京に自動運転特区を作る必要があると訴えてきました。 田原自動運転車が走り回る世界は、何十年か前までSF小説やマンガで描かれる夢物語でした。それが今現実になりつつあります。 安野 自分1人で作れるものであれば、ソフトウェアのコードを自分で書いてしまう。「自分1人では難しいそうだな」と思ったら、仲間と一緒に会社を立ち上げて集団で新しいテクノロジーを開発する。「今の技術ではまだ難しいけど、近い将来形になりそうだ」と思うアイデアは、SF小説の形でパッケージングする。これらが政治システムと直結する話ならば、選挙に立候補して政治家を目指す。私の中でこれは連続的な活動なのです。 田原これからますますがんばってください。またお会いしましょう。今後も奇抜なアイデアを僕にいろいろ教えてください。(2024年9月26日、講談社にて収録) 前篇記事 安野貴博(AIエンジニア)に田原総一朗が直撃 政治はAIで変わるのか?安野は次の選挙に出るのか? を読む
安野 貴博、田原 総一朗