日本は本当にダメな国なのか? 安野貴博(AIエンジニア)と田原総一朗が語り合った記録がヤバすぎる
「失敗しない経営」は亡国への道
田原僕はソニーを創業した盛田昭夫さんと親しかったんですよ。ウォークマンを開発したソニーは、70年代から80年代初めにかけて世界一のモノ作り産業へと成長しました。盛田さんはよくこう言っていたものです。 「ソニーは世界のどこもやってないことにチャレンジしている。どこもやっていないことにチャレンジすれば付加価値がつく。これを続ければ確実に経済成長できる。ただし付加価値があるモノを作るためには、3回も4回も失敗する覚悟をもたなければいけない」 1990年代に入ると、日本は「失われた30年」と言われる長い構造不況に突入しました。構造不況の時代は、3回も4回も失敗するどころか、1回大失敗したら経営者は交代です。だから90年代から日本の経営者のあり方が変わり、「失敗しない経営」が当たり前になってしまいました。 安野90年代の世界の時価総額トップランキングを見ると、NTTやソニーや日本のメガバンクがズラッと並んでいました。今上位にいるのはGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)やNVIDIA(エヌビディア)などテクノロジー企業ばかりです。時価総額トップランキングに、日本発のテクノロジー企業は一つも入っていません。 田原上位にギリギリ入っているのはトヨタだけになっちゃいました。 安野1990年代にIT革命が起こり、2010年代からスマートフォンが世界のゲームチェンジを引き起こしました。ITとスマホで伸びた会社が日本企業を次々と追い抜き、2020年代からAI革命が進んでいるところです。 今まさにゲームのルールが変わろうとしている時期に、AIの領域で勝てる会社を日本発で生み出せるかどうか。この戦いが次の10年、20年の日本の帰趨を決めていきます。 田原どうすれば日本はAIで勝てると思いますか。 安野急ピッチで人材を育成するしかありません。AIを使いこなし、新しいAIのテクノロジーを作れる人材を自前で育てる。あるいは、先ほど申し上げたようにAIのテクノロジーを作れる人材を世界中から東京に呼んでくる。資源もエネルギーも乏しい日本は、人材の力によって立国するしかありません。