東京がニューヨークやパリに勝てない理由

Photo by Shinya Nishizaki

田原東京を世界で突出して勝たせるために、安野さんが都知事だったら具体的に何をしますか。 安野東京が大阪や名古屋に対抗して争っても意味はありません。内側ではなく外側に目を向けて、世界の都市間競争の中でトップに躍り出るべきです。具体的にはニューヨークやロンドン、パリといった都市と並べたとき、これらに対抗して東京が勝っていかなければいけません。 田原ニューヨークやパリと比べて、東京はどこが劣っているんですか。 安野どこが一番課題かというと、世界で起きている人流のネットワークに乗れず、東京が世界から孤立していることです。パリとロンドンの間では、極めて優秀な高度人材が日常的に往復しながら働いています。アメリカ-ヨーロッパ、アメリカ-中国やアメリカ-インドも同様です。 田原なぜ東京は、世界中の高度な人材を呼び集めることがまったくできていないのでしょう。 安野東京には、グローバルスタンダードであるインフラが整備されていません。たとえばインターナショナル・スクールの数があまりにも少なすぎます。日本語という言語の壁は、アメリカやヨーロッパの人々にとってあまりにも大きすぎるのです。 ただしほかの部分では、東京が世界の主要都市に勝っている点はたくさんあります。平均的な教育水準と識字率が高く、世界のどの都市よりも圧倒的に治安が良い。近未来に東京がニューヨークやパリに勝てるポテンシャルは、いくらでもあると思います。 田原僕は堺屋太一さんと親しかったんですよ。彼は大阪出身でして、大阪を拠点にずっと仕事をしてきました。彼は常にこう言っていたものです。 「東京は政治の中心地だ。大阪は経済の中心地だ。アメリカでは政治の中心地であるワシントンよりも、経済の中心地であるニューヨークのほうがはるかに人口が多い。中国では政治の中心地である北京よりも、経済の中心地である上海のほうがはるかに人口が多い。田原さん、僕は大阪をなんとかニューヨークや上海のようにしたいんですよ」 これが堺屋さんの夢だったんだけど、堺屋さんが生きている間にはついにかなわなかった。 安野徳川家康が江戸に住み良い街を作りすぎたのかもしれませんね。東京23区の人口は1000万人ですが、多摩地域と関東エリア全域で見ると3000万人規模のつながった都市と言えます。3000万人の人口が集中するひとつなぎの都市は、世界的に見てもデリーの周辺かグレーター東京(首都圏)くらいしかありません。まずは東京と首都圏エリアを世界一の都市に育て上げれば、連鎖反応で日本全体を活性化することは十分可能だと思います。