欧州で今なぜか大流行の電制サスペンション 唯一の成功例は「ニッサンGT-R」
一つの回答を出したニッサンGT-R
現在のところ、可変サスペンションに明快な答えを見出しているのは、ニッサンGT-Rだけだ。GT-Rの場合、一番ハードな状況にスプリングとダンパーの設定を徹底して合わせ込み、日常域ではただダンパーを緩めるだけにしている。 もちろん硬いスプリングはそのままだから低速での乗り心地の改善幅は知れているし、高速域でのスプリングとダンパーのバランスがキリッと焦点の合った仕上がりになっている分、低速域では落差が大きい。しかしこの割り切りこそがGT-Rの真骨頂と言えるのである。本気で速く走ることを徹底追求したGT-Rにとって日常域はおまけでしかないのだ。 しかしながら、そのGT-Rですら、この2年ほど「乗り心地の改善」という言葉が開発チームから出ていることに少し残念な思いはある。果たして高速域を犠牲にすること無く乗り心地の改善が図れるのだろうか? そんなことを省みなかったからこそGT-Rは世界的に見てもオンリーワンなクルマだったのではないか? さて、結論だ。可変ダンパーは可変である以上、八方美人狙いでどこにもキリッとした焦点を結ばないものになりがちなシステムだ。「高速でも低速でも」とワイドレンジを誇りたい気持ちはわかるが、およそ世の中のことごとはトレードオフで成り立っている。冒頭に記したように「二兎を追うものは一兎を得ず」という言葉もある。果たして、可変ダンパーシステムはこのことわざを乗り越えて、硬軟取り混ぜた自在の見地を獲得することができるのだろうか。 (池田直渡・モータージャーナル)