「母子手帳が示す成長の目安が苦しかった」重度の知的・身体障害の息子を育てる母が「障害と共に生きるためのブランド」を立ち上げるまで
■普通の母子手帳の存在がとてもつらかった ── 2021年に、勤め先の印刷業社・トレンドで、障害と共に生きる方のためのブランド「cocoe」を立ち上げられました。何かきっかけがあったのですか? 山崎さん:障害者施設へのボランティア訪問とコロナ禍が重なったことが、ブランドの立ち上げにつながりました。弊社の代表も含めたスタッフたちで、2019年のクリスマスに、いっくんが当時通っていた療育施設にボランティアで訪問したんです。私の発案でした。弊社で大きな紙に印刷した紙芝居を作って披露したり、ハンドベルの演奏をしたりしました。
いざ訪問してみると、親御さんたちもたくさんいらしていて、すごく熱心に聞いてくださったんですね。なかには涙を流す方までいて。みんなに喜んでいただきたいと準備して行ったら、こちらも感動させられて…。 ── その後すぐにコロナ禍に突入します。 山崎さん:そうです。そんなときに、代表が「いっくんの子育てで困ったことを具体的に教えてほしい」と聞いてくださったんです。実は、クリスマスのボランティア訪問でいちばん感動していたのが、代表なんです(笑)。
そのときに、私は「母子手帳の存在がとてもつらかった」と伝えました。妊娠したときに公的機関からもらう「普通の母子手帳」が示す成長の目安といっくんの成長のズレが苦しかったんです。そうしたら、「きっと同じ思いをしたお母さんはいっぱいいますね」とおっしゃって、障害者の家族が苦しまないで使える育児ノート作りが始まりました。 2021年6月、ブランド「cocoe」の立ち上げと同時に販売を開始した「障害児や医療的ケア児のための育児ノート」は大きな反響をいただき、今も毎日のようにメールなどで全国から感謝の言葉をいただける商品になりました。
■当時の子どもはネガティブな私の写し鏡のようだった ── ご自身の経験を活かしてブランドを立ち上げられて、やりがいを持ちながらお仕事をされているのが伝わります。 山崎さん:いっくんの支援に関わってくださっている人たちや会社の人たち、cocoeを通じて出会った親御さんたちのおかげで、一つひとつの仕事を大切にし、人の役に立ちたいとより強く思えるようになりました。いっくんのお母さんになってなければ、仕事に対してここまでの気持ちは持てなかったかもしれません。