半導体バブル異変「AIかそれ以外」で明暗くっきり、“異次元の生産”に沸くアドバンと赤字転落ロームの違い
こうした状況を受け、「2030年に世界シェア30%」のトップ企業になることを目指して大増産を進めていたEV向けの次世代SiC(炭化ケイ素)パワー半導体への投資を、従来計画よりも縮小させる方針に転換した。 急ピッチで進めていた来期以降の供給能力拡大は延期。来2026年3月期に1100億円以上を掲げていた営業利益目標も、2027~2028年3月期の2カ年で1100億円を確保する計画へ軌道修正した。 同じく、自動車や産業機械をメイン顧客とする半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスも振るわない。同社の今2024年12月期の売上収益は約1兆3300億円と同9%前後の減収になる見込み。産業向けが足を引っ張り、車載半導体でも見通しを引き下げた。
2024年末以降の需要はさらに弱くなりそうで、工場稼働を大幅に落とす生産調整も行う。「これまではアップターンを逃さないように運営してきたが、今はより強くブレーキを踏む必要がある」(柴田英利CEO)。10年ぶりに再稼働を予定していた甲府工場でのパワー半導体の量産は、延期する方針だ。 低迷からの出口は現段階では見通せない状況で「どの顧客と話しても『来年の前半には回復』と言うが、そのすぐ後に『でも根拠はないんだよね』となる」(柴田CEO)。
■バブルから一転、混迷期へ 半導体業界全体を見渡すと、AI向けで高いシェアを持つエヌビディアとTSMCと距離の近い会社には追い風が吹く。が、それ以外はまだら模様で調整局面に入っている。 ロームやルネサスなど国内メーカーが強い車載向けだけでなく、スマートフォンやパソコン向けの回復もほとんど見通せない状況だ。半導体バブルから一転、足元は混迷を極めている。その中で関連メーカーの期待は、エヌビディアが牽引する「AI半導体頼み」の様相が強まるばかりだ。
石阪 友貴 :東洋経済 記者