半導体バブル異変「AIかそれ以外」で明暗くっきり、“異次元の生産”に沸くアドバンと赤字転落ロームの違い
さらにメモリー分野でも、大手DRAMメーカーはエヌビディア製品への自社製品の採用をめぐって競い合っており、HBMを大増産中。その製造工程で必須になるアドバンテストのテスタを大量に買い込む、という強烈な追い風が吹いている。 ■生成AI向けブームは続く もう一社、AI需要の波に乗るのは、研削・研磨装置を手がけているディスコだ。同社の今2024年4~9月期の売上高は前年同期比41%増の1790億円、営業利益は同68%増の759億円とまさに絶好調。同社でも、アドバンテストと同じくHBMの製造工程に使われる研削・研磨装置の引き合いが強烈に増えていることが大きい。
ただ前述の通り、HBMはメモリーメーカーが急ピッチで増産投資を行ってきた。そのため、遠くないタイミングで需要が急減するシリコンサイクルの谷が深くなる可能性も高い。 ディスコもHBM向けについては同様の見方をしているが、AI半導体向け全体に対するスタンスは強気だ。「生成AI向けが短期間のブームに終わる懸念は後退した」(IR担当者)というのだ。「2025年からは、先端パッケージング側での投資が強まってきそうだ」(同)。
先端パッケージングとは、ロジックチップとメモリーチップを高度な技術で電気的に接続する工程のこと。高性能なAI半導体を製品として仕上げる工程ではほとんど必須になっている。先端パッケージングは工程が複雑で、ディスコが強みを持つ研削や研磨工程が、何度も繰り返し行われることになる。 主に台湾の半導体製造受託大手TSMCがこの工程への投資を強めており、エヌビディア以外の半導体メーカーも同技術を活用して高性能な製品を作り上げることになる。先行したHBM向けに続いて、こうした先端パッケージングで使われる装置の需要が2025年まで見えてきている状況という。
■ロームは12年ぶりに赤字転落 一方で「AI以外」の半導体を手がけている国内半導体メーカーは、”暗”に転じている。 象徴的なのは、アナログやパワー半導体を主に手がける半導体メーカーのローム。同社は11月8日、通期業績見通しの大幅な下方修正を発表した。今2025年3月期の営業利益は従来予想の140億円から一転、150億円の営業赤字に転落する見通しだ。 自動車や産業機械、家電など同社がメインとしている領域すべてが振るわない。営業赤字となるのは2013年3月期以来、じつに12年ぶりとなる。