米ラッパー、ショーン・コムズの黒歴史 騒動と疑惑の時系列まとめ
コムズがキャシーを蹴り、引きずり回すホテルの映像が公開される
『Love Album』のプロデューサーが性的暴行でコムズを訴える 2月27日、プロデューサーのリル・ロッドことロドニー・ジョーンズがコムズから性的暴行を受けたとして、3000万ドルの損害賠償請求を申し立てた。コムズの『The Love Album』のプロデューサーは、レコーディング期間中に性的不適切行為を受けたと主張。さらにグラミー賞にノミネートされたアルバムの報酬として5万ドルも請求している。 ニューヨーク州南地区裁判所に申し立てられた70ページにわたる訴状によると、アルバムを制作しながらニューヨーク、カリフォルニア、フロリダで寝食を共にしている間、コムズは「同意なく肛門や性器を触り」、「音楽業界では日常茶飯事だ」と言って卑猥な動画を見せては「調教してホモセクシャルな関係を受け入れるよう」仕向けたという。またコムズが裸で家の中を歩き回り、シャワーを浴びるところを見るよう強要したとも訴えている。コムズのスタッフを統括していたクリスティーナ・コーラムにコムズの言動を報告すると、「ショーンはショーンだからね」と言われたそうだ。 訴状には他にも息子のジャスティンらが、パーティのために未成年の女性を調達していたとほのめかしている。こうしたパーティでコムズは客に薬を盛り、性行為をこっそり録画していた。ジョーンズもパーティで薬を盛られ、目を覚ますと「コムズと2人のセックスワーカー」と一緒にベッドで寝ていて、「全裸で、意識がもうろうとし、混乱状態」だったと主張。コムズはしばしば銃をちらつかせて威圧し、「ジョーンズ氏の顔を食ってやる」と脅したとも訴えている。 訴訟が公開されると、ノックアウトという芸名のアダルト俳優ディアンジェロ・マルキが、訴状の中でプロデューサーのスティーヴ・Jが性行為に及んでいるとされる写真は、自分が出演したアダルト映画のスチール写真だと主張した。 ディディの弁護を担当するショーン・ホーリー氏はジョーンズ氏について、「臆面もなく不当な金を狙う」「嘘つき」と呼んだ。さらに、「完全にでっちあげの、実際に起きてもいない出来事について他人にぬれぎぬを着せたジョーンズ氏の行為は、明らかに売名行為以外の何物でもありません」と続けた。ジャスティン・コムズの弁護士も訴訟について、「ジャスティン・コムズはふざけた疑惑を全面否定します。どれもみな嘘っぱちです! 明らかに、やぶれかぶれの人間があぶく銭目当てにあがいているいい例です。今後コムズ一家に関する誹謗中傷はすべて、法的手段で対処します」 捜査当局がロサンゼルスとマイアミのコムズ宅を捜索 3月25日、捜査当局はロサンゼルスとマイアミで同時にコムズ宅の家宅捜索を実施した。捜査を行ったのは国土安全保障省で、マイアミの家宅捜査のニュース映像には男性2人が自宅前で手錠をかけられている姿が映っていた。 「国土安全保障省捜査部(HSI)ニューヨーク支部は本日、現在進行中の捜査の一貫で、HSIロサンゼルス支部、マイアミ支部、現地警察当局の協力のもと、法的措置を執行いたしました」と、国土安全保障省捜査部の広報担当者は声明を発表した。「詳しい情報は分かり次第お伝えいたします」 ローリングストーン誌の情報筋によると、家宅捜査が行われている間、ニューヨーク南地区では性的人身売買およびRICO容疑に関連した捜査で、匿名女性4人と匿名男性1人が捜査官から取り調べを受けていたそうだ。他にも取り調べが予定されていたと情報筋は付け加えた。 コムズがキャシーを蹴り、引きずり回すホテルの映像が公開される 5月17日、2016年3月当時の監視カメラの映像が初めて世に出た。そこにはコムズが元恋人のキャシーをホテルの廊下で追いかけ、蹴り飛ばし、引きずっていく様子が映っていた。 CNNによると動画が撮影されたのは2016年3月5日で、キャシー(本名カサンドラ・ベンチュラ)が昨年11月に申し立てた性的人身売買訴訟に記載されている出来事と一致していると思われる。ベンチュラの訴状には、問題の出来事を収めた監視カメラの映像は存在したと書かれているが、本人はコムズがホテルに5万ドルを払って買収したとばかり思い込んでいた。 「胸がムカムカするような動画は、気分を害する暴力的なコムズ氏の言動を裏付けるばかりです」とベンチュラの弁護士ダグラス・ウィドガー氏は声明を発表した。「名乗り出て、こうした出来事に光を当てたベンチュラ氏の勇気と力は、言葉では言い表せません」 監視カメラの映像には音声がないものの、ベンチュラが裸足のまま、だぼだぼのパーカー姿で、手荷物を抱えてホテルの客室から急いで立ち去る様子が映っている。訴状によると、ベンチュラがホテルにいたのはコムズから「フリーク・オフ」に参加させられ、コムズが見守る中、男性セックスワーカーと性交を強要されたからだとある。 訴状には、フリーク・オフの最中コムズから「顔を殴られ、ベンチュラ氏の目の周りに青あざができた」とある。ベンチュラはコムズが寝入るのを待って、ホテルから抜け出したそうだ。 6件目の性的暴行訴訟、原告は駆け出しのモデル 5月21日、クリスタル・マッキニーという女性が、コムズから音楽業界でのキャリアを支援するという名目でスタジオに連れ込まれ、トイレで性的暴行を受けたとして訴えを起こした。 訴えによると、マッキニー氏は22歳当時、メンズ・ファッションウィーク期間中に「Ciprianiダウンタウン店」でディディに会ったという。男性のデザイナーからコムズを喜ばせるようにと念を押され、コムズと真向かいの席に座るよう命じられたそうだ。 「着席すると、コムズは性的意図を匂わせて、あからさまに原告に言い寄るそぶりを見せた。それはディナーの間ずっと続いた」と裁判資料には書かれている。「コムズは会話の間ずっとテーブル越しに身を乗り出して口説き、色目を使った。またコムズはディナーの間ずっと原告に酒を促し、何度もグラスにワインを注ぎ足した」 訴状には、暴行を受けてマッキニーは「気分が悪くなり」、一時的に気を失ったとある。我に返ると、「驚いたことにタクシーに乗せられ、デザイナーのアパートに向かっている最中だった」という。「心に傷を負う出来事のせいで」「原告は事件当夜の着衣を洗わず、クローゼットに保管した。現在もビニール袋に入れた状態で保管してある」 訴えによると、コムズは「股ぐらに彼女の頭を押し付け、『なめろ』と命じた」という。マッキニーが拒むと、「コムズは頭を陰茎に押し付け、無理矢理オーラルセックスをさせた」そうだ。 7件目の訴訟の原告は、薬を盛られて暴行された大学生 新たな訴訟の原告は、エイプリル・ランプロスという女性。5月23日付の裁判資料によると、1995年から2000年代初期にかけて、4回にわたりヒップホップ界のドンから性的暴行を受けたと訴えている。 エイプリル・ランプロスは1994年上旬、ニューヨークファッション工科大学在学中にコムズと知り合ったそうだ。訴状によると、「猛烈にアタック」された後、甘い言葉はやがて「セックスに基づく暴力的、強制的、虐待関係に姿を変えた」という。 訴状には、フロリダのコムズ宅で一緒に過ごした時の写真も添えられていた。手書きのバレンタインデーのカードには「Puffy」という署名がある。 ランプロスによると、1995年にニューヨークのダウンタウンのバーでコムズと待ち合わせした。酒は飲まなかったが、コムズから「甘い言葉と脅し文句を浴びせられ」、最終的に「圧力に屈した」という。原告いわく、コムズは無理矢理迫ってきたそうだ。「ランプロス氏はコムズからレイプされ、ほどなくして気を失った」と訴状には書かれている。 訴えによると、コムズはマンハッタンの自宅付近の駐車場で再びランプロスを襲い、力づくでオーラルセックスをさせたもよう。ランプロスがコムズと距離を置こうとしたところ、「プレゼントや空約束」でヨリを脅そうとしたが、やがて「ギャングの一面」が顔をのぞかせ、「怒り出し、脅しをかけ、荒々しくなった」という。 それから20年以上が経過した2023年、ランプロスが当時付き合っていた恋人に身元不明の男性が接触し、1997年にランプロスとコムズがセックスしている動画を見たことがあると言ってきたそうだ。「コムズは彼女の同意なくセックスのようすを録画し、複数の人間に見せていたらしいと言われた」と訴えている。 6カ月にわたるショーン・コムズの捜査記事をローリングストーン誌が掲載 昨年11月にR&Bシンガーのキャシーことカサンドラ・ベンチュラが性的人身売買でショーン・コムズを訴えた後、ローリングストーン誌はただちに調査を開始。ラッパー兼Bad Boyレコード社長兼億万長者のビジネスマンを6カ月にわたって徹底的に調べ上げた。5月28日に掲載された記事『バッドボーイの人生』では、ハワード大学の学生時代にまでさかのぼり、数百人にコンタクトを取って50人以上に話を聞いた。記事ではこれまで報道されなかった1980年代後半の暴行疑惑が明るみになった。 クラスメートの1人がローリングストーン誌に語った話では、コムズはある夜学生寮の前に現れ、「好戦的な」態度で恋人に外へ出ろと叫び始め、しまいには女性を殴打したとみられる。「彼は大声で叫び、彼女が下りてくるまでわめき散らし、愚かなふるまいをしていました」と、事件を目撃した別の学生も語っている。いわく、コムズはベルトのようなもので若い女性を「手あたり次第」殴打したという。目撃者によると、女性は明らかに怯えていた。「彼女は少しでも身を守ろうとしていました。泣いていました。私たちは『彼女から離れなさい』と言いました。みな彼女のために必死で叫びました」。3人目の情報筋も暴行のようすをローリングストーン誌に述懐した(暴行の当事者だった女性はローリングストーン誌の取材を拒否した)。 複数の人間が、コムズは暴行の常習犯だと語っている。名声と金、業界のご意見番という地位、こじゃれた愛想のいい伊達男という評判を利用して、短気な性格と裏で画策していた身勝手な行いを何十年も隠してきたのだと。膨れ上がる権力をかさにして、周りの人間を意のままに操り、一度などは元恋人のジェニファー・ロペスを取り戻すために、スタッフをMTVの番組『TRL』の撮影スタジオに送り込んで、看板を持たせて張り込ませたこともあった。2001年のナイトクラブ銃撃事件で無罪放免となった後、仕事関係者にセクハラした疑いもある。直属の上司を介して、その女性とねんごろになろうとしたらしい。 ローリングストーン誌が情報筋から入手した疑惑について、コムズの弁護士から返答はなかった。「コムズ氏は和解が成立した訴訟について発言は致しかねます。また係争中の訴訟についてもコメントは控えさせていただきます。どんなに信頼性に乏しくとも、情報筋からメディアが入手した疑惑にいちいち対応することはできません」。弁護士のジョナサン・デイヴィス氏はメールで声明を送り、このように述べた。「周知の通り、しかるべき当局が現在徹底捜査を行っております。したがって、重大な問題があればしかるべき場で対処され、法の下で事実とフィクションが区別されるものと確信しております」 ジョイ・ディッカーソン・ニール、クリスタル・マッキニー、デトロイトの匿名女性も、性的暴行でコムズを訴えて以来初めて公式声明を発表した。「キャシーの訴訟を聴いて、自分も名乗り出るべきだと思いました」と、ディッカーソン・ニールはローリングストーン誌の取材で語った。「お金が目的ではありません。時代のアイコンにまで登りつめたこの男が実はゲス野郎で、罰せられることのなかった長年の忌まわしい行為の末に多くの犠牲者を出したことを、世間に知らしめることが目的です」