日本一のファッション企業になるために TOKYO BASE初任給40万円の狙い
過去には大企業を経験してきた、いわゆる一般的に優秀と言われてるような人材を入れないといけないという発想で何人か入れたんですよね。割と高い年収で。だけど、 やっぱり機能しなかった。我々の問題でもあるんですけど、うちのようなスピーディーな会社との相性は良くなかったんですよね。そういったことがあったので、世の中の“あるべき論”よりも社内の現状や既存の社員と本質的に向き合っていくことが大事だということに改めて気付かされました。 逆を言うと、給与面だけを魅力に感じて応募してくださる人は、そんなに優秀じゃない人が多い。だから難しいんです。そこが第一目標にならないためにも、文化や理念がマッチするかどうか、自分で採用を全部見るようにしています。
新生TOKYO BASEが向かう先
―日本一のファッション企業を目指すとのことですが、一方でファッション業界に憧れる若者も減っていると聞きます。 学生の人数がシュリンクしているだけで、ファッション業界に憧れる人の全体数としては減ってないと思うんですよ。 ファッション業界は稼げないと言われがちですけど、それは平均値の問題であって、日本のトップの富豪はユニクロの柳井さん(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏)ですし、グローバルで見ると「ザラ(ZARA)」の創業者アマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)さんやLVMHグループのベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長が並んでいますから、稼げる要素がある業界なんです。ファッション業界でも上位2割の企業を見れば、間違いなく憧れの対象になる。そこを見てほしいという思いはあります。 むしろグローバル視点でみたら斜陽産業では全くないんですよ。むしろこれから上がっていく。僕らも中国では痛い目を見ていて、やっぱり簡単にはいかないですし、経営者が本腰入れていろんなリスクを背負っていかないとうまくいかないというのも肌で感じているので、そこを勝負しきれるかですね。 ―その中で、TOKYO BASEはどんな存在でありたいですか? やっぱり上位2割に常にいる会社の象徴でありたいですね。僕らだけではもちろん変えられるものじゃないですけど、少なくとも、日本におけるファッション業界の社会的地位の低さは変えたい。それを引っ張っていくリーディングカンパニーになれる可能性はあるんじゃないかなと。だからこそ、例えばこの報道を見て、世の中の経営者にもちゃんと考えてもらいたいなと思います。 ―今年2月に実施した社員総会では、今後の“新生TOKYO BASE”に向けた新たな取り組みを発表されたそうですね。 今年で17期目を迎えるにあたり、改めて企業としての存在意義について見直しました。結局行き着くのは、企業って人だよね、と。1人ではできないことを、組織で実現させていく。そのためには、しっかり自分たちの目標に沿った行動できる人たちが大事だと改めて気付かされました。 今後、売上規模はもちろんですが、少なくとも中価格帯以上のブランドを展開するファッション業界で日本一の会社をつくる。そうはっきりと言えるようになりました。目標の上方修正を行ったこともあり、企業として進化させていくための施策を総会で皆さんにお伝えしました。 ―新たなバリューも設定しています。 企業には経営方針を示す「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)」があると思います。我々で言うと、ミッションに「日本発を世界に発信する」を掲げ、ヴィジョン「5 VISION」には「全世界顧客感動」「ファッションプロフェッショナル集団」「NEXT MADE IN JAPAN」「世界10大都市展開」「最速売上1000億、EC売上500億」を設定して経営を行っています。 今回新たにバリューを定めたのは、目標の上方修正に伴って、ミッションやヴィジョンを具現化させていくための判断基準であったり、社員にとっての行動規範を改める必要があったからです。 ―バリューの具体的な内容を教えてください。 今年で17期目に突入し、活躍してきた人たち、あるいは能力があるけれどもいまいち活躍できなかった人たちの共通項を洗い出した時に、「自責」「素直」「愚直」という3つのワードが見えてきました。 「自責」は、何事も自分ごととして捉えられる人が結果的に成長しやすいというのが実績としてありましたし、景気やコロナの問題といった外的要因がある中でも打開していこうという思考ができる人がやっぱり結果的に成長していきました。 「素直」で言うと、キャリアを重ねていけばいくほど、人は良くも悪くもプライドが出てきますよね。その反面で、良いことも悪いことも含めた経験値に縛られすぎて、なかなか新しい行動を起こしにくい。だけど、素直な人は自分たちの状況を把握をして、改善できることがあれば、そこに対してまずはやってみようという行動力がある。それでうまくいかなかったら修正すればいい。そういった意味で素直さは大事だと思っています。 最後の「愚直」に関しては、会社がまだ小さかった頃は愚直な人よりも1人で何でもこなせる機動力のある人を重宝していたところがありました。しかし売上や企業規模が大きくなっていくにつれ、勢いでできる仕事で成果を出すだけではやっぱり難しくて、やらなければいけないこと、当たり前のことをしっかり積み重ねている人が、結果的に大きな成果を出すようになってきたので、そういう意味で愚直にやり続ける人材を大事にしたいなと思っています。