日本一のファッション企業になるために TOKYO BASE初任給40万円の狙い
我々はこれからも結果主義ではありますが、大切なのは目先の結果だけではなく、結果を出し続けること。お客様の評価がすべてです。いくら上司が「右」だと言っていても、お客様が「左」と言えば左が正解です。この3つのバリューを大事にしながら、しっかりとお客様の評価で判断をしていく企業体にしていきたいですね。 ―経営体制も刷新されるそうですが、どんな企業体になるのでしょうか。 詳細は控えますが、若手社員や企業文化に合う人たちを社内から役員に抜擢することも含めて変わっていきます。なによりファッション企業なので、いわゆる世の中的に仕事ができる人ではなく、ファッションが大好きだという思いをベースにファッション業界で勝負をしていきたいという人たちが活躍しないと、日本一のファッション企業にはなれない。そういうことも新生TOKYO BASEには含まれます。 ―単純な成果主義ではなく、ファッションへの愛が成果に結びつくような企業でありたい、ということでしょうか。 もちろん、ファッション業界だけでしか活躍できない人っていうのはダメですよ。ファッションが好き、だけど他の業界でも極論活躍できる。そういったような人たちが経営の中核となるのが一番重要だと思っています。 ―「日本一」は何年後が目安? 個人的な話になりますが、昨年10月に40歳を迎えました。その時に初めて「日本一」という言葉を掲げたんですよね。僕は基本的にできそうもないことは一切口にしないタイプなのですが、なんとなく道筋が見えてきた。日本一は経験したことがないので、そういった意味でも挑戦したいなという気持ちも半分あります。 ―競合他社の存在もありますが。 かつて勢いがあった百貨店系アパレルはピーク時に比べると売上が減っていますよね。セレクト業界も各社微増はしていますが、ほぼ横ばいです。我々の10年前の売上はたかが30億円でしたが、それが今では200億円規模に成長できました。既存のファッション業界を否定するわけではありませんが、従来の常識や風習に倣ってしまうと、どんどん伸びない会社になってしまうのではという危機感があり、もう1回ベンチャーを取り戻すということをやっていきたいと思います。 ―2023年度は創業以来初めて出店ゼロの一年になりました。2024年から再び攻勢をかけていくのでしょうか。 昨年はどちらかと言うと、分かりやすい挑戦をしないことが逆に挑戦だと思っていた年でした。いい話もいただいたんですけど、あえて成長の踊り場を作ってみました。そうすることによって、既存事業や組織の弱点が見えてくる。まだ完璧とは言わないですけど、それもあって今回の決断ができたというところがあります。 ―今春には初のニューヨーク出店を控えています。 念願の出店ですが、まずは土俵に立たないと何も始まらない。出店してからどう軌道修正していくかが重要なので、オープンすることだけにフルパワーを使わずに、オープンしてからどう分析・修正していくか、変に気合いを入れずにいきたいですね。売れなかったとしても、5年間、ソーホーの高い家賃を払い続けないといけませんから(笑)。 ―大きなチャレンジですね。 5年やってみて黒字化できなかったら、欧米エリアは諦める。そんな判断軸もあります。 でも実際に何度も現地を訪れてみて思ったのは、ソーホーエリアにあったインフルエンサー系ブランドはすべて退店していて、ある意味で歴史のある“ホンモノ”のブランドだけが残っていたんですよ。これらの共通項は、常に変化していて新しいという点。10年後、20年後も新しくい続けるためには商品企画から営業、販促まで変化できる会社でいなくてはと改めて思いました。 ―新業態の立ち上げも計画。どんな業態になりそうですか? 1つはステュディオスよりも若い世代をターゲットに、カジュアルとストリートに特化したセレクトショップを作ります。もう一つは、35~45歳の女性に向けたオリジナルブランドです。これは、既存のユナイテッドトウキョウやパブリックトウキョウを卒業した人に加えて、わかりやすく表現するなら“元ギャル”の人のための業態。今の35~45歳の女性は、いわゆる1990年代終わりから2000年年代前半のいわゆるギャル文化を作ってきた世代なんですね。その人たちの年齢が上がって結婚などのライフイベントを経て、昔よりはコンサバになっている可能性がある。そういった層に向けたブランドって意外とないなと思っていて。日本のギャルブームはアジアを中心に世界で注目されていましたから、ムーブメントが作れる可能性があるんじゃないかなと期待しています。
(聞き手:伊藤真帆)