日本一のファッション企業になるために TOKYO BASE初任給40万円の狙い
高学歴=優秀な人材ではない
―大卒と専門卒で初任給に差がある企業が多い印象がありますが、TOKYO BASEは線を引いていないんですね。 お客様からしたら学歴は関係ないですからね。 ―採用選考には谷代表も関わっているそうですね。 直近4年間は最終面接を取締役で分担していましたが、(2024年3月時点で)入社1年目の社員からは僕が全員最終面接するように戻しました。この半年間、毎週火曜日は一日8~9件の面接をこなしています。相当パワーを使いますが、それもあって肌感覚として“できるな”というのはありました。 ―“できる”とは具体的にどういった能力の高さでしょうか? 俗に言う優秀とは別で、我々TOKYO BASEが掲げているものに対して優秀だと感じた、ということです。新卒はキャリア採用の中途とは異なり、どちらかというと期待値で採用を決めるようにしています。成長の過程で、当然うまくいかないことや、諦めたいことが出てくると思うんですよ。でも、大事なのは、うまくいかない時に逃げずに壁を越えていくこと。それができる人材が結果的に成功していきますからね。逆に言うと、部長職に就いている社員を見ると、“失敗した人ランキング”にも見えてくる(笑)。そのくらい、いろんな経験をしてきているという証拠です。そういうのもあって、失敗をしてもグッと耐えられる人を求めています。 じゃあ失敗しても耐えられる人の共通項ってなんだろう、と考えた時に、やっぱり「服が好き、服を仕事にしたいんだ」という気持ちが強いことなんですよね。不動産でもいいし、ITでもいいと思っている人は、いざ壁にぶち当たった時に、たとえば「よく考えたら私はITの方がやりたかったんだ」と逃げ道をつくりがちです。もちろん、社内でいろいろな基準はあるんですけど、前提として、うまくいかない時でも「好き」の気持ちをバネに成長できる人を見極める努力はしています。実際に自分が最終面接をやるようになってから、いわゆる1年目の離職率が圧倒的に減りました。 ―「現代の若者は打たれ弱い」という意見もあります。 僕も最初はそう思っていたんですけど、自分がいざ採用の現場にもう一度立ってみたら、意外とそうでもなかったんですよね。「最近の若い子は~」というのは、僕が新人だった頃から言われてきたことで、いつの時代も一生言われることなんですよ。ただ価値観の違いというだけなので。本質的にうまくいかないことを改善する力や逃げない力は、もともと持ち合わせている才能や人生経験に基づく部分もありますが、やはり社内の環境によって変わってくるというのはすごく思いましたね。だからこそ、すぐ辞められてしまうような教育をしない。経営者も若手社員に向き合う。それだけの話です。 ―谷代表はどのようにして向き合っていますか? うちの社員に聞くとわかると思いますけど、上下問わずフラットに接するように心がけています。逆に、僕と同じ世代でもとっつきづらい人はおそらく一生とっつきづらいでしょうし、年齢ではなく相性の問題もありますよね。若手社員に対しては「最近の子はFacebook見ないよね、TikTokしか見ないよね」みたいな、表層的な事実だけで人を区別しないようにはしています。 ―規模が成長するにつれて、経営者と社員の距離感は大きくなりがちです。一体感を作り上げる上で工夫されていることは? 距離感に関しては、確かにそういう時期もあったんですけど、創業社長のメリットでもありますが、自分で同じマインドに対して同じ夢を描いてくれる仲間を探して作り上げることができるので、特に採用に直接関わるようになったこの2、3年は機動性が出てきたように感じています。 ―2、3年というと、コロナをきっかけに社内環境も変化した? そうですね。例えば部長クラスでも売上が上がらなくて、そのまま会社を去ってしまったり、中国事業も先の見えない状況が続いていましたから厳しかったと思います。途中で諦めるという判断はしょうがないんですけど、それを超えることができた人はやっぱり成長していましたし、今後同じような事態に見舞われても乗り切れる。当人も自信がついていたようですし、そういった社員は会社としても信頼できるので、コロナ禍は大変でしたが本質的なことが見えてきたというのはあります。 ―求めているのは、ただの優秀な人材ではない。