スマホリングが自助具に 当事者がくれた「さりげなく」の視点 難航の道のり、浮かんだ〝待ってくれる人〟
ペットボトルのキャップなどを手がけるメーカーが「スマホリング」を制作しました。スマホスタンドとしても使えますが、実は本来の機能は「別にある」とのこと。困っている人の力になりたいと開発された経緯を取材しました。(withnews編集部・金澤ひかり) 【動画】キャップがすんなり開く! スマホリングの使い方
キャップメーカーが作ったスマホリング
スマホスタンドとしても使える「スマホリング」を今年から売り出したのは、飲料や調味料、生活雑貨などのキャップを手がける業界大手の「日本クロージャー」です。多くの飲料・調味料メーカーなどとの取引があります。 なぜ「キャップ」の企業がスマホリングを販売しはじめたのでしょうか? スマホリングというと、スマホの背面に粘着テープなどで取り付け、スマホを片手で持つ時に指を通して安定させたり、スマホスタンドとして使ったりできるものです。 しかし同社のスマホリングは、中心部分がペットボトルキャップにぴったりとはまる設計になっている「キャップオープナー」の機能もそなえているのです。 キャップをはめてスマホごと回すと、少しの力でキャップを開けることができます。 手に障害があったり、高齢で筋力がなかったりする人にとって自助具の役割も果たせる製品です。商品名は分かりやすく「スマホリング+キャップオープナー」です。
アイデア出しに苦戦、特命組織の2人
このリングを開発したのは、営業推進部の大久保雄祐さんと、三野宏さん。二人は2021年4月、「既存事業の発展」というミッションのもと新たに発足した市場開発グループのメンバーとして集められました。といっても、当初はなかなかアイデアが出てこなかったそうです。発足から5カ月が経ったある日、二人の頭の中にふと浮かんだのは「開栓ジグ」(以下、ジグ)でした。 同社では、製品の性能を確かめるため、飲料を詰める作業を行う工場で一日に何百本とキャップを開ける作業をすることがあります。その際、手のひらに収まるくらいの大きさの円形の金属「ジグ」を使います。中央に開いた丸い穴にキャップをはめ、時計回りに回すと、少しの力でキャップを開けられる道具です。 このジグ、持ったときの大きさがスマホとほぼ同じだといいます。 三野さんは「これ、なんか面白いんじゃないか」と想像を巡らせ、「スマホにジグがついていたら、楽に開けられる。スマホリングにできないか」と、商品案にたどり着きました。