妊娠9ヵ月の女医、出産とキャリアを両立させるには?「”無理な理由”を考え出すとキリがない」
■「自己分析」と「環境設定」が大事 出産とキャリアを両立させる上で欠かせないこと
――女性がキャリアを築く上で、産休や育休が足かせとなるケースもあるかと思います。女性医師の方たちが置かれる現状はいかがでしょうか? 【ちま】医師の仕事は常に勉強の日々です。科にもよりますが、ブランクが空くと手技の感覚が抜ける不安もあり、長期で育休を取る可能性を考えると、妊娠に踏み出せない女医さんは多いと思います。一方、医師は働き方次第でコスパ良く収入を得る方法もあります。だからこそ、プライペートとキャリアを考える上で大事なのは、「自己分析」と「環境設定」の2点だと感じます。 ――具合的に言うと? 【ちま】「自己分析」は自分の数年後の理想の医師像を細かく分析することです。例えば、「専門性を極めたい?」「プライベート重視でコスパ良く稼ぎたい?」など。専門性を極めたいのなら、長く休暇を取るのは難しくなるため、両親やパートナーの協力はマストになる。だから、そのための土台固めを早めにしておく。一方、収入とQOLを重視するのなら、美容に進んだりフリーランスになったりすることで、効率良く働くことも可能です。その場合、育児を軸にして、医師のアルバイトで生活を送る選択肢もあります。 ――すごく参考になる考え方です。 【ちま】出産育児とキャリアの両立は「無理な理由」を考え出すとキリがないので、逆に「どうすれば理想に近づけるか=実現する方法」を考えて、自分の理想から逆算して計画を立てる必要があると感じます。
■女性は「年齢によるリスク」が付き物 産みたいと思ったときに産める環境が理想
――投稿に対して「職場に迷惑なのでは?」といったコメントをもらうことも。どう受け止めていますか? 【ちま】「産休で当直要員がいなくなると誰かが穴埋めする必要がある」「上級医が気を使わなければならない」という2点があるようでした。前者については、幸いなことに今の勤務先では研修医は当直要員ではなく任意なので、「迷惑」にはならないと判断しました。後者については、考えてもどうしようもないので、なるべく気を使わせないために「妊婦とは関係ないクオリティで働く。それが無理そうなら研修期間が延長になるとしても休みを取る」と決めて、上級医の先生にもそう伝えて毎日勤務しています。 ――非常に難しい問題ですよね。 【ちま】妊娠時期に関しては、女性には「年齢によるリスク」が付き物です。「マイナスな想定が先行して考えても答えが出ないこと」を懸念して自分の選択肢を狭める必要はないと感じます。とはいえ、それが自己中心的な選択となり、周囲に迷惑をかけることはあってはならない。両者のバランスは難しいと感じますし、今後も私の課題でもあります。一番の理想は、どのフェーズにいる女性も「産みたいと思ったときに産める環境」を設定すること、例え匿名であっても、「迷惑だ」などとマイナスな個人的な主観を発信しないことだと感じます。 ――旦那さんが育休を取り、ちまさんは最短復帰を目指すとのことですが、夫婦ではどのような話をしたのですか? 【ちま】話す上で軸に置いたのは、お互いの「幸福観」です。彼の一番の幸せは「家族の幸せ」。私は「家族も仕事も友達も遊びも全て100でいること」。彼はそんな私の価値観を尊重して、育休を取る選択をしてくれました。 ――臨床医としてやりがいを感じる部分と今後の目標を教えてください。 【ちま】自分の治療で患者さんの状態が改善することにやりがいを感じます。(今は指導医の先生のご指導のもとなのでまだまだですが…)小さい頃から「オンリーワンになる」ことが好きでした。「ナンバーワンになる」よりも性格的にオンリーワンでいる状態が快適で、そのためなら自分は頑張れると感じました。とはいえ、医師を極めるのは非常に大変な道のりだと感じています。なので、今はまだ臨床医としてのキャリアを進むかどうかも不透明ですが、2年間の研修医を全力で全うし、その中で自分が一番ストレスなくオンリーワンを目指せて、かつ人を幸せにできる進路を考えていきたいと思っています。その過程で研修中に取得可能な資格の勉強も進めていきたいです。今は「とにかく毎日全力で」を積み重ねる研修生活を送ることを自分に課しています。