「苦しいホールと苦手なホールは違うで。苦しいホールを積極的に攻めてこそ活路も開けるんや」【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集⑯】
1960年代から2000年代初頭まで、50年の長きに渡って躍動した杉原輝雄。小柄な体、ツアーでは最も飛ばない飛距離で、当時トーナメントの舞台としては最長の距離を誇る試合で勝ったこともある。2打目をいちばん先に打つのだが、そのフェアウェイウッドが他の選手のアイアンより正確だった。ジャンボ尾崎が唯一舌を巻いた選手で、「マムシの杉原」、「フェアウェイの運び屋」、「グリーンの魔術師」「ゴルフ界の首領(ドン)」と数々の異名をとったのも頷ける話だ。「小が大を喰う」杉原ゴルフ、その勝負哲学を、当時の「週刊ゴルフダイジェスト」トーナメント記者が聞いた、試合の折々に杉原が発した肉声を公開したい。現代にも通用する名箴言があると思う。
苦しい時ほど積極策をとる
ーー「苦しいホールと苦手なホールは違うで。苦しいホールを積極的に攻めてこそ活路も開けるんや」 “苦手なホール”を簡潔にいうと、パー4でドライバーを2度使っても乗らんホールや。まあ日本にはそうないけど、風、雨などでそうなることはあります。乗らん可能性が0%なら苦手ホール。けど2打目がドライバーで乗る可能性が1割でもあれば、それは“苦しいホール”やと自分の中で規定してるんです。そして苦しいけどもそれなら何とかなる、いや何とかせなと考えているんです。 苦しいホールの例でいえば、太平洋御殿場コースの9番ホールやろな。距離は400ヤードを超し、第2打が打ち上げになっていて、バンカーもせりだし花道が狭い。こういう状況で、3番ウッド、時にはドライバーで打ったことさえある長さです。3番ウッドやとグリーンで止まりにくく、2オンは難しくなります。 しかしそれは届きさえば何とかなる、ということでもあるんです。事実、乗ったこともあるし、グリーン横から寄せてパーを拾ったこともありますんや。 ボクのような飛ばんもんは、ドライバーでグリーンを狙うより、バンカーの前に打っておいて、寄せワンを狙うという堅実策がベターのように思われますが、ボクはそう考えてません。乗る可能性があるなら狙う。苦しければ苦しいほど、積極的な攻略を考えるということです。苦しい時耐えて無理をせず、ケガしないようにというのも一つの方法ですわ。しかしそれだけでは、活路は開けません。それに、ドライバーを2度使ったとしても、ボクにはそんな無理なゴルフというわけでありません。ひとつ間違えばOBというケースとはまったく違うんです。飛ばんもんが勝つためには、苦しい時ほど積極策をとる。これはボクの哲学やいってもよいと思ってます。