25歳でホストから福祉の道への転身を決意。 スウェーデンへ赴き帰国後”NPO法人”を設立その訳に迫る
障害者雇用は価値である
橋本さんたちが担っている「就労支援」の仕事は、日本の社会課題である人材不足の解消。 しかし、現状では「障害者雇用は負担である」という雇用側の思考や、支援者側も「働くことが難しいから支援が必要」という思考があります。橋本さん自身も当初はこうした思考だったといいます。 しかし、実際に橋本さんが障がいのある人と一緒に仕事をすることで、自分にはできない仕事を担っていることの気づき、自分自身のパフォーマンスも格段に上がっていることを実感。 「障がいのある人と一緒に働くことは私にとって『価値』なのです。もちろん、世の中には障がいのある人と一緒に働くのが苦手な人もいるでしょうし、パフォーマンスが落ちる人もいると思います。つまりは、相互作用によって『価値』にも『負担』にもなり得るということです」とその体験から語ります。 社会福祉士として障がいの捉え方において、橋本さんは「専門的な説明となってしまいますが、ICF(国際生活機能分類)で考えるようにしています。この概念は世界共通の考え方になっており、個人の価値観は環境によって左右される。環境によって相当な制限が長期的な状態であれば『障がい』なのです」と話していました。 「この相互作用に着目すると、障がいのある人が働く職場環境によっては能力を発揮できたり、一緒に働く人のパフォーマンスを上げたりもできます。そして会社全体の生産性の向上につながるので、私たちの仕事は人材不足の解消なのです。そのためには、上記のICFに基づいて状況の理解把握(アセスメント)を行い、調整をしながらマッチングを図るというプロセスが重要であり、そのノウハウを提供するのが私たちの専門性だと考えています。このノウハウを広げていくことが私たちの役割であり、人材不足という大きな社会課題を解消できる私たちの仕事がとても価値の高い仕事だという思いがあります」
情報不足が課題 知られていないことを認識すること
障がいのある人の雇用者数は年々増えていますが、障害者雇用を行う際の企業のノウハウ不足や理解不足でミスマッチも増えています。この背景には情報不足があると橋本さんはいいます。 「働く障がいのある人、雇用する企業の情報不足によってミスマッチが起こります。その結果『やっぱり自分に仕事はできないんだ』と思ってしまう障がいのある人や『やっぱりうちの会社で障害者雇用は難しい』と思ってしまう企業が増えてしまい悪循環が起こるのです」 この原因は、自分たちにあると考える橋本さん。 もっと自分たちの活動についての情報発信を行い、企業との接点を多く持ち、私たち支援者と企業がパートナーシップで雇用を進めていくことでより適切なマッチングが可能になるといいます。マッチング事例を増やし、好循環を生み出し「障害者雇用は価値である」という企業の数を増やしていくことが今後の目標だと話してくれました。 一方で、近年は情報が溢れている時代で、障害者就労(雇用)における情報も千差万別だと橋本さん。 それには、障害者雇用代行ビジネスと言われるサービスも広がってきており、ノウハウをビジネスモデルにするくらいにマーケットが広がってきているといいます。そして、その背景には「法定雇用率(民間企業の場合には2.5%以上の障害者雇用をする義務があります)」があり、自社内で雇用するのは難しいので、雇用率を達成する手段として代行サービスを利用するということが起こるのです。 「このことからも『障害者雇用は負担である』という思考が潜在的にあることがわかります。そして、実際にこのサービスを選択する企業が年々増えています。障害者雇用代行ビジネス業者は広告費をかけてSNS広告やDM、電話営業などで情報を拡散しているので、顧客インサイトに届く情報発信によって利用者層を増やしているのです」 一方で橋本さんたちのような福祉業界では公的資金で運営しているところが多く、広告費という予算枠を持っているところは少ない状況。加えて、SNSの活用やITについてのリテラシーが低い業界ともいえます。 「実際に、これまで代行ビジネスを利用していた企業から、私たちのサービスについて『もっと早く知りたかったと』言われることも多いです。それぐらい私たちの活動は『知られていない』ことを認識する必要があります」 そのため、WEB広告をはじめとした情報発信が不足している状況や、企業ではAIやDX化が進む一方で業界が時代の変化に追いついていないということに課題を感じ、現在福祉業界のDX化に取り組んでいるという橋本さん。 そのサービスの第一歩が、今回リリースした「WEL‘S ON」のサービスになります。 「業界全体の情報発信量を増やし、情報不足を解消することが今掲げている目標です」と話す橋本さん。さまざまな出会いと周りの支え、そして橋本さんの行動力で「福祉業界が一つになって、誰一人取り残さない社会を実現したい」という思いが今後さらに伝わっていくことでしょう。
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