和田正人の熱すぎるお笑い愛 M-1グランプリは生観戦2回…羞恥心の大ブレークに嫉妬した過去
映画『くすぶりの狂騒曲』でタモンズのツッコミ担当を演じる
俳優の和田正人(45)が、映画『くすぶりの狂騒曲』(12月13日公開、立川晋輔監督)でお笑い芸人に初挑戦した。演じたのは「大宮ラクーンよしもと劇場」でくすぶっていたお笑いコンビ・タモンズのツッコミ担当、大波康平。和田はもともとお笑いが大好きで、自らの歩みと重なる部分が多かったと語る。(取材・文=平辻哲也) 【写真】「家メシ。最高だわ」…夫・和田正人が絶賛する吉木りさが作った自宅の夕食 『くすぶりの狂騒曲』は、お笑いユニット「大宮セブン」の初期メンバーである実在の芸人コンビ・タモンズをモデルに、成功を夢見る芸人たちの葛藤と成長を描いた青春群像劇だ。 「お笑い芸人の役はずっとやりたいと思っていた役柄だったので、『ついに来たか』と純粋にうれしかったです」 和田が演じたのは、お笑いコンビ・タモンズのツッコミ担当、大波康平。周囲の仲間たちが次々と成功を収めていく中で、自分たちは結果を出せない焦燥感や葛藤に苛まれながらも、芸人としての夢を追い続ける。 ただ、和田は、囲碁将棋、マヂカルラブリー、GAG、タモンズ、すゑひろがりず、ジェラードンが所属する「大宮セブン」の存在自体を知らなかったのだという。 「芸人さんたちは知っていたんですけど、タモンズさんのことは知らなかったんです。映像を拝見しましたが、めちゃくちゃ尖っていて、客に全く寄せてない。正直面白いと思わなかったんですが(笑)、(ファイナリストになった2024年5月の)『THE SECOND』のネタはめちゃくちゃ面白くて洗練されていましたね」 劇中では、相方・安部浩章役の駒木根隆介(43)とコンビを組んだ。 「自己紹介から始まって、本読みをするのがだいたい(映画の)開始パターンなんですけど、今回は最初にネタ見せから始まったんです。駒木根には僕の家に来てもらって、いっしょに稽古をしたんですが、僕の方が年上ということもあって、めちゃくちゃやりやすかった。素晴らしい、頼もしい相方で、彼でよかったなと思いました」と振り返る。 撮影前はタモンズの2人とは会わなかったそうで、それがやりやすかったという。 「現役で活動中の芸人さんを演じるプレッシャーはありましたね。駒木根とは、タモンズさんのモノマネはやめようと話しました。似ている、似てないがあると、僕たち自身がそこに縛られて思うような芝居ができなくなるので、僕たちなりのタモンズを大事にしました。映画を見たタモンズの2人からは、『よかった』と言ってもらったし、大波さんからは『めちゃくちゃ泣いた』と言ってもらったので、よかったです」 実は無類のお笑い好き。特にM-1グランプリが大好きで、俳優になる前の2003年、第3回大会の決勝は直接見に行った。 「当時、普通に応募して当選し、劇場で生観戦しました。その時は笑い飯さんが大好きで、前年に登場したダブルボケのスタイルが衝撃的だったので、見たくて足を運んだんです。本当に大感動でした。俳優になってからも、2010年には、第10回大会を芸能人観覧枠で観に行く機会もありました。当時、毎年観覧に行っていた大林素子さんと仲良くなり、『ぜひぜひ』ということで連れて行ってもらったんです。その場で笑い飯さんが優勝するのを目の当たりにして、改めて、お笑いの魅力を強く感じました」 俳優になってからも、お笑いへの憧れがあった。08年当時、フジテレビ系クイズバラエティー『クイズ!ヘキサゴンII』に出演していた、つるの剛士、野久保直樹、上地雄輔の3人によって結成されたユニット「羞恥心」が大ブレークしたのを間近で見て、嫉妬さえ覚えたという。 「くすぶっていた俳優たちがユニット組んで、バッカーンと売れて、ドラマの仕事をバンバンやり始めた時にすごく羨ましかったです。自分としては悔しさもあったし、バラエティー番組から売れることもあるのか、と気付いた。それで、僕も毎月トークライブに出て、滑らない話みたいなことをやっていた時期もあったんです」 この笑いへの経験は、今回の役作りに生かされた。映画では、大宮セブンの芸人たちがフリートークを展開するイベントのライブシーンがクライマックスになっている。 「最後のライブシーンはリアル感を出すために、カット割りを極力省き、お客さん役を入れて、一発撮りに近い形で挑みました。役者陣全員で作り上げたシーンで、特にツッコミのタイミングなどは自分の感覚を生かしました。あのシーンを目指しながら、作り上げていった感じもありました」 夢でもあった芸人役だけに、本作にかけた思いも強い。 「今回の映画は、夢を追い続ける人々の物語であり、そこに出演する僕を含めた役者自身も、(劇場マネジャー役の)徳井(義実)さん、や(ベリーハック・諸積役の)岡田(義徳)さん以外はくすぶっている存在だと感じています。その彼らの凄さをしっかり見てほしいというのが、僕の裏テーマです。芸人さんになりきって、恥ずかしさをかなぐり捨てて熱演した意気込みが、みなさんに届けば、と思っています」と和田。「希望としては、タモンズさんには、『THE SECOND』で売れずに、映画公開までくすぶっていてほしかったんですけどね……」と笑った。 □和田正人(わだ・まさと)1979年8月25日生まれ、高知県出身。2005年に舞台『ミュージカル・テニスの王子様』で本格的に俳優デビュー。2007年に『死化粧師 エンバーマー 間宮心十郎』でテレビドラマ初主演を務め、以降TBS系ドラマ『陸王」(17)、『笑うマトリョーシカ』(24)、フジテレビ系ドラマ『教場』(20)、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(13)、『虎に翼』(24)、映画『Winny』(23)、『オレンジ・ランプ』(23)、『シサム』(24)などに出演。 ヘアメイク/小林純子 スタイリスト/田村和之
平辻哲也