外国にルーツを持つ生徒が増加、日本語筆記試験なしの特別入試が広がる…進学率の低さが課題
関西国際大が2024年度入試から導入した「外国ルーツ生徒特別型」選抜を利用し、この春から2人が同大学で学んでいる。日本語で出題される一般入試では十分に力を発揮できない可能性がある受験生を、書類や面接で選抜する仕組みだ。同様の入試は他大学でも試みられ、多様な個性を尊重し、誰もが能力を発揮できる公正な環境を意味するDEI(Diversity、Equity、Inclusion)の実践例としても注目される。(新井清美)
奨学金も用意
「いい仕事に就くために大学に行きたかった。経営に興味があり、ぴったりの入試があった関西国際を選んだ」。同大学経営学部1年のシブ・ガウタムさん(22)は笑顔で話す。 ネパール生まれ。14歳の時に日本で働く父親のもとに家族で移り住み、17年春に兵庫県伊丹市の中学校に入学した。勉強が好きでなく、母国では学校に行かない日も多かったが、別室で授業を受けて日本語を身に付けるうちに意欲がわき、「日本でチャレンジしよう」と、4年制の定時制高校に進んだ。
母国語と英語に加え、日本語も話せるようになったが、日本語で大学を受験するのはまだ厳しい。海外への進学を考えていたところ、同大学の「外国ルーツ生徒特別型」選抜を知った。 この選抜は、両親または片方の親が外国籍で、日本に住む受験生が対象。学費負担を軽減するための奨学金も用意されている。日本語の筆記試験はなく、面接と、志望理由書や高校の調査書で合否が判定される。 ガウタムさんは現在、留学生向けの日本語の授業を受けつつ、経営学やマーケティングなどを学ぶ。「聞いたことのない単語が多いが、顧客と店の関係や売り上げの管理など、とても面白い。将来は自分でビジネスがしたい」と話す。
浸透に時間
同様の入試は、各大学が導入し始めている。奨学金の有無などに差があるが、24年度からは大阪経済法科大(大阪府八尾市)が、流通科学大(神戸市)も25年度から実施している。 18歳人口が減る中で新たな受験者層を呼び込める上、多様な学生を集められるメリットがあり、関西国際大の芦沢真五副学長は「日本の学校に通った一方、外国の文化や言語についての経験を持っている。様々な背景の人を受け入れるインクルーシブな社会を目指す中で、大学として実践するべきだと考えた」と語る。