V・フォーレン長崎の“あの”高田明社長が描く新スタジアム構想とは?
県中央部の諫早市にある、トランスコスモススタジアム長崎の収容人員は2万258人。規模や設備などは現状でほとんど問題ないものの、アクセスの悪さが長く問題視されてきた。 直近で言えば3‐1で勝利し、J1へ自動昇格できる2位を確定させた昨年11月11日のカマタマーレ讃岐戦には、J2に昇格した2013シーズン以降では歴代最多であり、キャパシティーを大幅に超える2万2407人もの大観衆が詰めかけた。 公共交通機関の便が悪い事情もあって、実に6割超が自家用車で来場した。しかし、スタジアム周辺は駐車場が不足しているため、駐車できないファン・サポーターが続出。その影響で周辺道路にも大渋滞が発生するなど、大混乱に陥ってしまった。 鳥栖とのホーム開幕戦に続いて、10日の第3節では浦和レッズを迎える。大勢のファン・サポーターの来場が確実視されるなかで、昨シーズンのホーム最終戦の二の舞だけは避けなければいけない。J1昇格を決めてから、長崎のスタッフは東奔西走してきた。高田社長は言う。 「逃げるわけにはいきませんから。何とか乗り越えようと、みんなで知恵を出し合ってきました」 弾き出された答えのひとつは、駐車場予約アプリを運営する株式会社akippaとの提携だった。スタジアム周辺の駐車場約1400台分が事前にアプリを介して予約できるようになり、クラブの公式ホームページ上で予約状況が逐次報告される。 予約が取れない場合は他の交通手段の利用を促すことで渋滞を減らし、駐車場利用による収益は、無料シャトルバスの費用などにあてられる。長崎だけでなく、アウェイチームのファン・サポーターにも試合観戦を満喫してほしい、という熱い思いが込められたアイデアに高田社長も目を細める。 「寝ずに考えた、と言っていいくらい多くの課題がありました。関わったスタッフを褒めてあげたいくらいです。鳥栖戦と浦和戦は結果を検証する場にもなるので、それを受けて変えるべきところは変えていきたいと思っています」 現状のなかで最大限の努力を積み重ねながら、アクセス問題を一気に解消するどころか、Jリーグが究極の理想として掲げる「町中スタジアム」を具現化させる構想も加速させていく。 「V・ファーレン長崎は県全域がホームタウンなので、この市(長崎市)でなければいけない、というマストではないと思っています。でも選択肢の中で、そこが1番、集客の立場からもできるのではないか、という考えの中でやっています」 跡地活用事業者にはJR九州など、複数の企業が応募しているという。事業者の決定は4月もしくは5月となるが、長崎県を元気にしようという合言葉のもと、一部市議からは長崎への積極的な支援を田上市長に求める声があがり始めている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)